電子線(EB)硬化型接着剤により省エネ化を実現
NEDOの補助事業「脱炭素社会実現に向けた省エネルギー技術の研究開発・社会実装促進プログラム/省エネ軟包材ラミネートシステムの開発」(以下「本事業」)において、三井化学株式会社と東レ株式会社は共同で、無溶剤ラミネーションと電子線(EB)照射をインラインで行うプロセス並びに、その ラミネーション工程用接着剤を業界で初めて開発しました。
今回、三井化学が保有するウレタン接着剤技術と東レが保有するEB硬化型フレキソ・オフセット印刷技術を融合することで、EB硬化型接着剤の接着性能を大幅に向上させることに成功しました。またインラインにてラミネーションとEB照射を行うプロセスの開発により、フィルム包装製造におけるラミネーション工程の年間消費電力を309万kWh、二酸化炭素(CO2)排出量にして1290t、約61%の削減を達成しました。
今後は、印刷からラミネーションまでを含むフィルム包装製造工程全体の省エネルギー化とCO2排出量削減を図り、環境対応と生産性向上の両立を実現します。

図1 開発した新技術と従来法の比較イメージ
1.背景
フィルム包装材は、製品の保護やバリアー性、耐熱性、耐薬品性を高めるため、ラミネーションによる多層化が施されています。軽量性や透明性、加工のしやすさを生かして、食品包装やシャンプー・洗剤などの詰め替えパウチなどに広く利用されています。また、ビンや缶、プラスチック容器からフィルム包装材への移行は、省資源化やフードロス削減に貢献しています。フィルム包装材の世界市場は2022年時点で約38兆円、年間成長率は3.2%※1と拡大を続けています。
国内のフィルム包装材製造におけるCO2排出量の内訳(図2)は、フィルム工程52%、インク・印刷工程32%、ラミネーション工程16%です。フィルムや印刷工程では、バイオ原料の活用やモノマテリアル化、無溶剤化など、CO2排出量削減に向けた取り組みが進んでいます。
一方、ラミネーション工程では、従来の接着剤に石油系溶剤が使われ、塗工後の加熱乾燥や燃焼処理で多量の電力を消費しています。さらに、接着剤はラミネーション直後に完全硬化していないため、外観不良を防ぐ目的で加温処理(熱養生処理、5日間程度)が必要です。この工程により製造時間が長くなり、電力消費も増加します。そのため、ラミネーション工程におけるCO2排出量削減は、早急に対応すべき課題となっていました。

図2 フィルム軟包装製造CO2総排出量と内訳(三井化学、東レ共同調査、2020年)
このような背景の下、NEDOは2023年度から本事業※2の一環として、三井化学、東レと共同で「省エネ軟包材ラミネートシステムの開発」に取り組んできました。
2.今回の成果
このような背景を受けて、三井化学と東レは、本事業において、フィルム包装ラミネーション工程の溶剤系接着剤に代わり、無溶剤系EB硬化型接着剤を採用し、インラインにてラミネーションとEB照射を行う新技術を共同開発しました。
現在ラミネーション工程は、溶剤系2液熱硬化接着剤を使用するため、塗布後の溶剤乾燥、貼り合わせ後に加温処理が必要であり、ラミネーター1台あたり年間約2127tのCO2を排出※3しています。無溶剤系接着剤を用いることで溶剤乾燥を省く方法もありますが、加温処理時間の延長や加工速度、接着性能の低下などの課題があります。
今回の共同開発では、三井化学のウレタン接着剤技術と東レのEB硬化型印刷技術を融合し、EB硬化型フレキソ・オフセット印刷技術をウレタン接着剤に応用することで、接着性能を大幅に向上させました。また、ラミネーションとEB照射をインラインで行うプロセスにしたことで、溶剤乾燥が不要となり、加温処理時間の短縮と低温化が可能となりました。この結果、ラミネーション工程の年間消費電力を309万kWh、CO2排出量を1290t、約61%削減しました。今回共同開発した新技術は、従来技術で課題となっていた硬化性や加工性を解決し、溶剤を含まないことからVOC(揮発性有機溶剤)フリー化にも貢献する業界初の次世代ラミネーションプロセス※4です。

3.今後の予定
今回の成果は、包装仕様を大きく変更することなく、ラミネーション工程におけるCO2排出量を大幅に削減できることから、サプライチェーン排出量算定におけるScope3排出量※5削減を進める上で有効な選択肢になります。三井化学と東レは、食品や日用品向けフィルム包装への標準化に向けて、流通やブランドオーナーに対してEB硬化型フレキソ・オフセット印刷技術と本技術を合わせた提案を進め、フィルム包装業界の環境負荷低減と生産性向上の両立に向け、2027年の社会実装を目指します。
(想定効果)2040年までに入れ替え対象となる機器の8割に、今回開発したEB照射装置付きラミネー
ターを導入した場合
効果:年間電力使用削減量:4.3億kWh
年 間 CO2 削 減 量 :18万t
年間原油換算削減量:9.65万kL
【注釈】
※1 約38兆円、年間成長率は3.2%
Smithers社 The Future of Global Flexible Packaging to 2028
https://www.smithers.com/Services/market-reports/Web-archive/flexible-packaging-to-2024
※2 本事業
事業名:脱炭素社会実現に向けた省エネルギー技術の研究開発・社会実装促進プログラム/省エネ軟包材ラミネートシス
テムの開発
事業期間:2023年度~2025年度
事業予算:2.3億円(補助金を交付)
事業概要:脱炭素社会実現に向けた省エネルギー技術の研究開発・社会実装促進プログラム
https://www.nedo.go.jp/activities/ZZJP_100197.html(「2023年度公募採択テーマ概要」PDF資料をご覧ください)
※3 ラミネーター1台あたり年間約2127tのCO2を排出
「カーボンフットプリント制度試行事業CO2換算量共通原単位データベースver. 4.01(国内データ)」
https://paperzz.com/doc/5896151/co-2-%E6%8F%9B%E7%AE%97%E9%87%8F%E5%85%B1%E9%80%9A%E5%8E%9F%E5%8D%98%E4%BD%8D%E3%83%87%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%83%99%E3%83%BC%E3%82%B9ver.4%EF%BC%88%E5%9B%BD%E5%86%85%E3%83%87%E3%83%BC%E3%82%BF%EF%BC%89-pdf%E7%89%88および
「令和2年度の電気事業者ごとの基礎排出係数・調整後排出係数等(一部追加・更新)の公表について」
https://www.env.go.jp/press/press_00216.htmlに基づき算出しました。
※4 業界初の次世代ラミネーションプロセス
三井化学・東レ共同調査(フィルム包装製造におけるラミネーション工程、2026年3月末時点)に基づいたものです。
※5 Scope3排出量
企業活動に伴い自社の外で発生する温室効果ガス排出のこと。原材料調達、物流、使用、廃棄など供給網全体を含む。
(参考)環境省/グリーン・バリュープラットフォーム
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/estimate_03.html