令和8年熊本地震の影響と防災に関する企業アンケート

株式会社帝国データバンクは、全国938社を対象に、2026年7月28日に発生した「令和8年熊本地震」による企業活動への影響のほか、企業防災(企業が行う自然災害への対策)に対する意識についてアンケートを行った。
SUMMARY
令和8年熊本地震による自社の企業活動への影響について、『影響がある(見込み含む)』とする企業は15.7%となった。設備や建物の損傷といった直接的な被害に加え、販売機会の減少や仕入れ・出荷の遅れなどの影響がみられている。また、今回の地震を受けて、何らかの防災対策を新たに導入、または見直したいと考えている企業は84.6%となった。なかでも、社内連絡網や避難行動マニュアルの整備などが上位にあがり、人命の安全確保や迅速な初動対応を重視する姿勢がうかがえた。
本アンケートが、今回の地震による影響の把握ならびに復興や今後の自然災害への備えの一助となれば幸いである。
調査期間:2026年8月7日~8月12日(インターネット調査)
有効回答企業:938社
令和8年熊本地震による影響を受けた/見込む企業は15.7%、『九州』では5割超に
令和8年熊本地震による自社の企業活動への影響(直接・間接問わず)の有無を尋ねたところ、『影響がある(見込み含む)』(「既に影響が出ている」と「影響が見込まれる」の合計)とする企業は15.7%となった。内訳をみると、「既に影響が出ている」が8.2%、「影響が見込まれる」が7.5%だった。
企業からは、「倉庫の棚が3割倒れ、商品が飛散し、事務所もさまざまな物が散乱、店舗も一部の棚が倒壊、商品が飛散した。10年前の教訓を生かせた部分はあったが、揺れの方向や強さから、それなりに被災した」(紙類・文具・書籍卸売、熊本県)といった、地震により設備などへ直接的な被害を受けた声が聞かれた。また、「熊本の自動車関係の顧客でラインストップが生じている。工場休止の連絡もあり、受注減が考えられる」(輸送用機械・器具製造、長野県)との声も聞かれ、被災地域における生産活動の停滞にともない、取引先企業では受注面への影響が見込まれている。

さらに、「熊本県八代市で製作しているサッシなどの建築資材に納期の遅れが出ている」(建設、福岡県)や、「出荷停止と出荷ルート変更にともない経費が増加している」(飲食料品・飼料製造、熊本県)といった声も聞かれ、通行止めや生産の一時停止・減産により仕入れや出荷に遅れが生じるなど、被災地域の内外を問わず物流面で影響がみられ、サプライチェーンに支障が生じている。
他方、「影響の有無を確認中」で詳細が判明していない企業は6.9%、「現時点で影響はない」企業は74.1%だった。しかし、そうした企業のなかでも、「取引先の工場被害が大きいため今後の供給が心配」(パルプ・紙・紙加工品製造、大阪府)のように、今後の影響を懸念している声があり、復旧の動向次第では影響が拡大、長期化する恐れもある。
『影響がある(見込み含む)』企業の割合を規模別にみると、「中小企業」が15.1%だった一方、「大企業」は19.8%と「中小企業」を上回った。背景には、サプライチェーンの頂点として広範な取引ネットワークを有していることがあるためと考えられる。また、地域別では被災地である『九州』が53.9%と突出して高かった。企業からは「倉庫内荷物と倉庫外壁が損傷したほか、通行止めによる渋滞で配達の遅延が起きている」(運輸・倉庫、熊本県)や「小売店舗が営業できていない」(各種商品小売、福岡県)といったコメントがあがった。
企業の8割超が「企業防災」対策を導入/見直し 連絡網や避難行動マニュアルの整備が上位
令和8年熊本地震を受け、自然災害への対策(企業防災)の重要性が改めて認識されている。そのようななか、自社ではどのような対策を新たに導入、または見直したいと考えるか尋ねたところ、「社内連絡網の整備・確認」が45.0%で最も高かった(複数回答、以下同)。次いで、「災害時の避難行動マニュアルの整備」が38.5%、「社内対応体制の整備・ルール化」が37.8%と4割近くで続いた。また、「安否確認体制・システムの整備」(33.0%)は3割超となり、従業員の安全確保に向けた取り組みを重視する姿勢がうかがえた。
企業からは、「商業施設における避難後の爆発事故を教訓に、災害避難に関する社内ルールを新たに定め、全社員への周知徹底を図った」(飲食料品・飼料製造、神奈川県)や、「実質、地震で建物が大きな被害を受けた場合、対応する保険がないため事業継続は難しい。しかし、人命だけは守りたいとの考えから、連絡網の整備や避難行動マニュアルの見直しを行いたいと考えている」(娯楽サービス、兵庫県)といった声が聞かれた。
このほか、「飲料水、非常食、防災用品などの用意」(37.3%)といった防災用品の備蓄・確保をあげた企業が4割近く、また、業務継続に関わる「データのバックアップやシステムの冗長化」(28.9%)は3割近くとなった。
他方、「自家発電設備の導入」(11.5%)といった設備面は1割台にとどまった。今回の地震では停電の解消が比較的迅速だったこともあり、費用負担の大きい発電設備を新たに導入・見直したいとする企業は限定的だった。一方で、「井戸水の利用を検討する」(機械・器具卸売、静岡県)といった声も聞かれた。被災地で断水が続くなか、水不足への備えの重要性を実感し、対策を見直したいと考える企業がみられた。
総じて、今回の地震を受け、企業の84.6%が何らかの対策を新たに導入、または見直したいと考えており、企業防災に対する関心の高さがうかがえた。

本アンケートの結果、令和8年熊本地震により、企業の15.7%が既に影響を受けている、あるいは今後影響を受けると見込んでいることが分かった。地震による設備や建物の損傷といった直接的な被害に加え、受注面や販売面への影響もみられる。また、通行止めや生産の一時停止・減産などを背景に、仕入れや出荷の遅れが発生するなど、被災地域の内外を問わずサプライチェーンに支障が生じている。
一方で、今回の地震を受けて、企業の84.6%が何らかの防災対策を新たに導入、または見直したいと考えていることも明らかとなった。なかでも、社内連絡網や避難行動マニュアルの整備、安否確認体制の強化などが上位にあがり、人命の安全確保や迅速な初動対応を重視する姿勢がうかがえた。
帝国データバンクの調査では、震度5強以上の揺れを観測した熊本県内25市区町村には2万2,193社の立地が判明しており、そのうち3,782社は県外企業の拠点である。TSMCの半導体製造拠点のある菊陽町や周辺の大津町などでは県外企業の割合も高く、今回の震災の影響は熊本県内にとどまらず、全国のサプライチェーンへ波及する可能性がある。被災地域の早期復旧・復興が求められるとともに、企業においても代替調達先の確保や事業継続計画(BCP)の策定・見直し、社内連絡網や社内対応体制、避難行動マニュアルの整備などを進め、自然災害による人命や事業継続への影響を最小限に抑える取り組みが、これまで以上に重要となろう。
地震の『影響がある(見込み含む)』企業からの声
- 出荷停止と出荷ルート変更にともない経費が増加している(飲食料品・飼料製造 [冷凍調理食品製造]、熊本県)
- 被災工場の復旧要請に対し十分な対応が難しい状態。また、工場までの道路損傷で渋滞が激しい。材料が入荷しないため、復旧に時間がかかり、対応に苦慮する(建設[一般電気工事]、熊本県)
- 給排水設備の故障や店内ガラスの破損などの被害が出ている(繊維・繊維製品・服飾品卸売[婦人・子供服卸売]、長崎県)
- 九州自動車道の通行止めで迂回して運行させているが、運転時間が増えてしまうために荷主への説明や料金の交渉が必要となっている。また、フェリー対応を増やす運行内容となり、コスト高で非常に厳しい(運輸・倉庫[一般貨物自動車運送]、宮崎県)
- 被災地域の製造ラインの復旧・修理依頼が殺到しており、当面は最優先業務として取り組んでいる(機械製造[荷役運搬設備製造]、福岡県)
- 一部で物流が止まっているほか、取引先が数件被災している(飲食料品・飼料製造[水産練製品製造]、山口県)
- 半導体工場の被害から、部品調達の見直しが急務となっている(専門サービス、奈良県)
- 取引先が被災して、予定が変更になったほか、イベント中止により、現地で販売中の商品が予想より多く売れ残った(出版・印刷[出版]、東京都)
- 顧客への配達が一部遅れている(建材・家具、窯業・土石製品卸売[建築材料卸売]、東京都)
- 顧客の精密機械・装置に地震の影響が生じており、緊急の補修・メンテナンス作業が発生している
(電気機械製造[電子応用装置製造]、東京都)
- 商業施設の爆発事故により、他地域の系列施設のイベントが自粛・中止となった。その影響でスタッフや催事出店者の宿泊のキャンセルが出ている(旅館・ホテル[旅館]、埼玉県)
企業防災対策に関する企業からの声
- 今回の商業施設での爆発事故を教訓に、人命を最優先とした災害時の避難行動マニュアルを整備する予定である(娯楽サービス[パチンコホール]、福岡県)
- 今回の事例を通じて、BCP(事業継続計画)対応の重要性について改めて考えさせられた(自動車・同部品小売[自動車(新車)小売]、福岡県)
- 猛暑や水不足が課題となっているため、どのような対策や備えが必要かを検討していきたい(メンテナンス・警備・検査[一般機械修理]、愛知県)
- 激甚災害発生時の初動対応(人命確保)はもちろん重要だが、その後いかに事業を復旧・継続していくかに関するノウハウや、被災企業の復旧までの経験談を聞く機会があればありがたい。地方の中小企業として、どのような準備や備えが必要なのかを知るうえで大変参考になる(運輸・倉庫[港湾運送]、静岡県)
- 国は国土強靱化や防災・減災対策を早急に強化すべきである。特に、老朽化したインフラ設備への対応は喫緊の課題だと考える(鉄鋼・非鉄・鉱業製品卸売[鉄鋼卸売]、東京都)
【被災地・被災企業への応援メッセージ】
- 被災された方々ならびに事業者の皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。一日も早い復旧・復興をお祈り申し上げます。(メンテナンス・警備・検査、神奈川県)
- 被災地支援のため、会社として寄付を行うこととしました。厳しい暑さのなかでの生活や復旧作業は大変なことと存じますが、一日も早い復旧・復興を願っております。(運輸・倉庫、静岡県)
- 私自身も能登半島地震の被災者です。珠洲市の実家は倒壊し、危うく命を落としかけました。今は大変つらい状況かと思いますが、希望を失わずにお過ごしください。必ず前を向ける日が来ると信じています。遠い北陸の地から応援しています。(メンテナンス・警備・検査、石川県)
- 東日本大震災で岩手も被災しました。命あってこそです。焦ることなく、まずは生活環境を整え、心身ともに健康でいられるよう気をつけてください。(飲食料品卸売、岩手県)
- 突然の大きな震災に見舞われ、この厳しい暑さの中、停電・断水などにより、大変なご苦労をされていることとお察しいたします。政府や自治体などによる支援も懸命に進められておりますので、どうか希望を失うことなく、いましばらくの間、皆様方で力を合わせてお過ごしくださるよう心よりお祈り申し上げます。(不動産、東京都)