玉置浩二 ~故郷楽団 Concert Tour 2015~ 10月25日(日)夜9:00[WOWOWライブ]
今年に入り、自身初となるフルオーケストラとの共演によるコンサートツアーや安全地帯での音楽フェス出演など、様々なスタイルで精力的にライブ活動を重ねている玉置浩二。
「今は毎日でも歌っていたい」と語る彼は、交響楽団との全国ツアー終了後休む間もなく、翌週から新たな全国ツアーへ出た。
ツアータイトルは「故郷楽団」。北海道・中標津町で始まり出身地・旭川で終了するこのツアーでは、玉置が田園風景の中で見てきた純粋で一途な郷愁がテーマとなった。
ツアー終盤の9月6日。この日で3日連続となる東京国際フォーラムC公演最終日。ステージで放たれる全てを記録すべく、WOWOWの映像収録カメラが入った。高まるばかりのツアーへの賞賛の声を胸に抱き留め、固唾を飲んで開演を待つ満場のオーディエンス。定刻を少し過ぎ、バンドメンバーが連れ立って舞台に登場した。
静かな、それでいて胸に残るインストゥルメンタルが演奏される。1993年に発表された2nd Albumの1曲目、アルバムタイトル曲「あこがれ」だ。バンドが奏でるメロディーが、ひとりひとりの故郷を照らす。ツアーのテーマである「郷愁」が冒頭で提示される。それぞれの心の奥底にある大切な何かが浮かび上がる。
やがて、ゆっくりと玉置がステージに現れる。大きな拍手が沸き上がり、その後会場がほんの一瞬、静寂に包まれる。ギターを爪弾き、バンドが音を重ねていく。彼は、そっと呟く様に歌い出す。麦わら、赤とんぼ、土手。さよなら、じいちゃん。歌われたのは、3rd Album『カリント工場の煙突の上に』収録曲「花咲く土手に」だった。
発表当時玉置が思い描いた風景が、そのままに伝わってくる。歌い出して1分も経たずに、ひとりひとりの心は故郷に還る。町で暮らす人々の生活や日々、そしてその喧噪の中で生まれ育った自分。観衆がそれぞれの記憶に想いを馳せていく。“生きること”への深い共感が、確実にそこに芽生えていく。
「花咲く土手に」を歌い終えギターを持ち変えて、静かに微笑みをたたえる玉置。場内を拍手が鳴り響く。続いて、キーボードのイントロが拍手に連なる。代表曲のひとつである「カリント工場の煙突の上に」だ。この2曲の流れは、アルバム収録順と同じ。今回のツアーで彼が描こうとしている情景が、より色濃く伝わってくる。そう感じた。
続いて3曲目に披露されたのは、1987年に発表されたソロデビューシングル「All I Do」。玉置が大事にしている「最初の気持ち」が改めて表明される。彼のヴォーカルと故郷楽団が奏でる音だけが会場を優しく包む。そして、ほんの僅かなMC。彼はユーモアを交えながら、オーディエンスの心を解きほぐしていった。
その後も、彼がその想いを込めた楽曲がたち丁寧に歌い紡がれる。ほぐれた心に、歌が浸みわたる。作品によっては制作時期に20年以上の隔たりがある。それでも込められたメッセージはひとつだった。温かみのある故郷楽団の演奏が、玉置の歌にそっと寄り添っていく。
メンバー紹介の後、玉置が客席に語りかける。「諸先輩方、こんな僕でも慕ってくれる後輩のミュージシャン、たくさんのスタッフ。みんなの力があって歌えているんだ、独りで歌っているんじゃないんだなと実感しています。何より、皆さんの素晴らしい人生の力に僕の歌がなれるなら、これからも精進を重ねます」この日、これ以上の言葉は不要だった。
休憩明けの第二部。歌の輪郭が確実に大きくなっていく。「やっぱ好きやねん」(やしきたかじん)、そして「I LOVE YOU」(尾崎豊)が披露される。昨年発表されたカバーアルバム『群像の星』収録曲だ。仲間たちへの祈りにも似た純粋な想いが伝わってくる。玉置の歌に熱が込められていく。
続いて、安全地帯の新たな代表曲とも言える「君がいないから」。「日本を代表する作曲家の極上のメロディーを、日本の至宝たる歌手が歌い上げる。」彼の熱唱に感じ入りながら、ふと、そんな言葉が心に浮かんだ。シンガーソングライター玉置浩二の真骨頂とも言える、そんな熱唱だった。
そして、愚直に生きる者たちへのアンセムともいえる「MR.LONELY」。人生への強い肯定が歌われる。何もないけど、元気でいる。観衆は、自分の人生に“YES”と頷く。呼応するかの様に、故郷楽団が誰もに刻み込まれているフレーズを奏でる。「田園」だ。会場中が立ち上がり、手拍子し、声の限り歌う。心の中で、“YES”が圧倒的になっていく。感動が溢れ出て、止まらなかった。
満場の拍手に応える玉置と故郷楽団。アンコールを求め、手拍子は高まっていく。全身でそれらを浴びる様に受けとめ、力強く頷いた玉置はギターを手にし「メロディー」を歌い出す。彼の歌を柔らかく受け止める様な故郷楽団の演奏と共に、玉置は噛み締める様に歌う。そして、歌い終えた玉置は、全ての“人生”へ敬意を払うかの様に深く頭を下げ、ステージを降りていった。
玉置は、今回のツアーについてこう語っている。
「恋人や家族や夫婦。何もなくたって、二人の間には愛があるじゃないか。愛がふるさとであり、心がふるさとなんだ。愛だけをメッセージにして、それを伝えたかった。」
音楽に対する真摯な姿勢と、仲間たちへの想い。それら全てが力を与え、彼の歌がその結晶になる。玉置にとって、歌は愛そのものだ。彼は今日も誰かのために歌い続ける。現在の玉置浩二は歌うために生きている。その姿を番組で見届けて欲しい。
■■■WOWOW番組情報■■■
玉置浩二~故郷楽団 Concert Tour 2015~
10月25日(日)夜9:00 [WOWOWライブ]
http://www.wowow.co.jp/music/tamakikoji/
9月6日に行われた東京国際フォーラムC公演の模様を放送。ツアー最終地であり、玉置の故郷でもある旭川での模様も紹介。