オリエンタル・ミンドロ州での調査で、従来の湛水管理に比べて生態学的に優れていることを確認
国内最大規模のネイチャーベースのカーボンクレジット創出・販売事業を展開するGreen Carbon株式会社(代表取締役:大北潤、以下「Green Carbon」)は、UPLB財団(UPLB Foundation, Inc. / UPLBFI)(※1)と、フィリピン・オリエンタル・ミンドロ州ピナマラヤンにおいて、AWD(間断灌漑)(※2)と従来の常時湛水(CF)による水田管理の生物多様性への影響を包括的に分析する調査(以下「本調査」)を完了しました。
本調査は、生育の3つの主要な段階(15日目、60日目、90日目)にわたって実施され、AWDが従来の常時湛水と比較して、生態系の健全性を積極的に高め、侵略的な害虫を抑制し、より豊かでバランスの取れた生物多様性を支える、極めて効果的かつ気候変動に強い農法であることを確認しました。

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◆本調査の背景
Green Carbonは東南アジア各地で自然を活用したカーボンクレジットの創出に取り組んでおり、AWD技術を通じた持続可能な稲作にも注力を強めています。フィリピンにおいて、AWDは水田でのメタン排出量と水使用量を大幅に削減しつつ、カーボンクレジットの創出も後押しできる、気候変動対策として重要な技術として位置づけられています。
AWDの生態学的な影響を厳密に評価するため、グリーンカーボンはUPLB財団と提携し、フィリピン有数の稲作地帯であるオリエンタル・ミンドロ州において、複数の生育段階にわたる生物多様性調査を実施しました。本調査では、いずれもRC-218品種の稲を栽培する0.5haのAWD圃場と0.3haのCF圃場を対象に、現地サンプリング、捕獲トラップに加え、XRFによる土壌組成分析や16Sメタゲノム解析といった高度な実験室分析を用いました。
フィリピン国家灌漑庁(NIA)はフィリピン全土の灌漑管理を統括しており、AWDを全国規模で普及させる上で不可欠な広範な現場ネットワークを有しています。本生物多様性調査は、グリーンカーボンがNIAをはじめとするフィリピン政府機関と進めるAWD普及に向けたより広範な連携の科学的基盤の一部を成すものです。
◆主な調査結果
本文動物相の多様性、植物相の多様性、そして土壌微生物の健全性という観点から、以下の結果が確認されました。
動物相の多様性 - 害虫抑制と生態系バランス
AWDによる乾湿の交互サイクルは水田環境を再構築し、水に依存する侵略的な種を抑制する一方で、有益な生物は保護します。本調査では、15日目のAWD圃場においてスクミリンゴガイ(Pomacea canaliculata)の個体数がCF圃場に比べて74%減少していることが確認され(71個体 対 270個体)、この抑制効果は60日目(287個体 対 417個体)まで持続しました。この外来種は、フィリピンの稲作において経済的損失が最も大きい害虫の一つです。
さらに重要な点として、AWDの導入下でも、チュウサギ(Ardea intermedia)、コサギ(Egretta garzetta)、ツバメ(Hirundo rustica)といった生態系の指標となる鳥類の目撃数は、3回すべての調査時点で変わらず維持されており、AWDが地域の鳥類の活動に悪影響を及ぼさないことが示されました。
節足動物の群集構造に関しては、AWD圃場はCF圃場に比べ総種数はやや少ないものの、シャノン多様度指数(0.9792 対 0.8957)およびシンプソン多様度指数(0.4162 対 0.4061)はいずれも高く、栽培期間を通じて害虫の優占度が低く、より健全でバランスの取れた生態系であることが示されました。
植物相の多様性 - すべての生育段階で高い植物種の豊富さ
AWDによる周期的な乾燥と土壌の通気性向上により、すべての調査段階においてCF圃場よりも一貫して高い植物相の多様性が確認されました。種の豊富さは、AWD圃場では3~4種であったのに対し、CF圃場では1~3種にとどまりました。またシャノン多様度指数も、15日目(1.07 対 0)、60日目(0.56 対 0.28)、90日目(0.76 対 0.33)と、すべての段階でAWD圃場が明確に上回りました。雑草の優占度指数もAWD圃場では季節が進むにつれて段階的に低下しており、生態学的バランスの改善が裏付けられました。
土壌微生物の健全性 - AWDが有益な微生物叢の活動を促進
AWDの導入下では、全ての調査期間を通じて従属栄養細菌数(CFU/g)が一貫して高く保たれており、AWDによる土壌の通気サイクルが、常時湛水と比較してより活発で健全な土壌微生物群集を促進していることが示されました。また鉄濃度もAWD下で経時的に独自の上昇を示し、90日目には約55wt%でピークに達しました。これは、AWDの好気的な乾燥期が、有害となり得る第一鉄(Fe²⁺)を、より安全な第二鉄(Fe³⁺)へと酸化させるためです。
◆AWDのパフォーマンス概要
[表: https://prtimes.jp/data/corp/117956/table/286_1_b4c4a65f8d39caf27f4e0f31fa346ca2.jpg?v=202607170145 ]
◆今後の展望
今回の包括的な評価により、AWDの導入はCF方式と比較して、水田生態系の健全性を最適化する、極めて有利で気候変動に強い農法であることが実証されました。生態学的な観点では、AWDはスクミリンゴガイなどの侵略的な農業害虫を効果的に抑制する一方で、重要な指標鳥類の活動を維持し、植物相の多様性を高め、節足動物の生物多様性についても同等の水準を保っています。地表下においても、AWDによる動的な水分サイクルが、有益な土壌微生物のより堅調で活発な個体群を一貫して促進しています。
今後、Green Carbonは政府機関、研究機関、農家ネットワークと連携しながら、フィリピン全土でのAWD導入拡大を継続してまいります。AWDによる生態学的・農業的効果を最大化するため、以下の取り組みが推奨されます。
- 穿孔式の水位管理チューブの使用に関する農家への実践的トレーニングを通じて、オリエンタル・ミンドロ州をはじめとする他の稲作地域へAWDの導入を拡大する。
- 進行中のAWDプログラムの評価に生物多様性モニタリングを組み込み、複数の作付シーズンにわたるAWD圃場の生態学的変化を追跡する長期的なデータセットを構築する。
- AWDとCFの水田システムをより完全な形で比較・評価するため、夜行性・移動性の動物(コウモリ、カエル、甲虫類)を対象とした補完調査を実施する。
- AWD圃場でタウナギ(Monopterus albus)が確認されたことを踏まえ、AWDシステム内での稲・魚複合養殖の可能性を検討する。これは、生物多様性と農家所得の両方を高める共生型モデルにつながる可能性がある。
- 本生物多様性調査を裏付け資料として活用し、国のカーボンクレジット制度および温室効果ガス排出削減プログラムにおいて、AWDを検証済みの気候変動対策技術として普及促進する。
※1:UPLB財団
UPLB財団は、フィリピンを代表する農業研究大学の一つであるフィリピン大学ロスバニョス校(UPLB)と提携する団体。本生物多様性調査においては、科学的知見と現地調査能力を提供
※2:AWD (Alternate Wetting and Drying)
間断灌漑(AWD)は水田の水位を目安に、数日おきに入水と自然乾燥を繰り返すという手法。間断灌漑(AWD)の場合、連続的な入水に比べ、水使用量を削減することができ、水資源の保全にも寄与
※3:シャノン多様度指数:生物の種類数と均等さを表す指標(高いほど多様性が高い)
※4:シンプソン多様度指数:群集の多様性を表す指標(高いほど特定種への偏りが少ない)
※5:従属栄養細菌数:有機物を分解する土壌細菌の数。土壌の生物活性の指標
※6:絶対バイオマス:植物全体の乾燥重量。植物の生育量を示す指標
※7:分げつ:イネの株元から新しい茎が増えること。収量に影響する重要な生育特性
◆Green Carbon 株式会社
代表者 :代表取締役 大北 潤
所在地 :東京都千代田区麹町2-3-2 半蔵門PREX North 9F
設立 :2019年12月 12日
事業内容 :カーボンクレジット創出販売事業、農業関連事業、環境関連事業、その他、関連する事業及びESGコンサルティング事業
URL : https://green-carbon.co.jp/
◆Green Carbon事業紹介
Green Carbonは、「生命の力で、地球を救う」をビジョンに掲げ、国内外において自然由来のカーボンクレジットの創出・登録・販売までを一気通貫で支援するクライメートテック企業です。加えて、植物・微生物の研究開発事業、ESG/排出枠コンサルティング事業、各種環境関連事業も展開しています。
事業は日本および東南アジアを中心に10カ国以上で展開しており、水田(中干し・AWD)、バイオ炭、森林保全、カーボンファーミング、マングローブ植林、家畜排せつ物処理、畜産由来メタン削減など、多様な自然由来プロジェクトを推進しています。国内の水田(中干し)においては、2023年度に日本初・最大規模となる約6,220tのクレジットを創出。2024年度は約40,000ha(約65,000t)、2025年度は約65,000ha(約65,000t)、2026年度には約90,000ha(約95,000t)まで拡大を予定しています。また、酪農分野では日本初となるJ-クレジットのプログラム型登録を実施し、2026年度に6,749tを創出。
海外においては、東南アジアを中心に大規模なプロジェクト組成とクレジット創出を推進しており、フィリピンではJCM(二国間クレジット制度)を活用した投資プロジェクトが完売。さらに、ベトナムやカンボジアにおいても、JCM方法論の承認に向けて州・自治体・政府と連携を進めています。また、クレジットの申請・登録・販売までをワンストップで完結するプラットフォーム「Agreen(アグリーン)」を提供し、煩雑な手続きや書類作成を効率化。創出者の負担軽減とスケーラブルな事業推進を実現しています。加えて、環境価値付き農産物(環境配慮米)の流通、研究開発、ESG・排出枠コンサルティングも手がけ、自然資本を軸とした脱炭素の実現に貢献しています。
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