高校生と大学生によるビジネスコミュニティ「First off Projects」が、地方に住む高校生を東京に招待し、都会の生活を体験する「都会留学」の実証実験を行った。
高校生と大学生のためのビジネスコミュニティ
First off Projectsは、高校生と大学生のためのビジネスコミュニティ。個人や企業、子どもたちや社会の未来を一歩前へ導くために、デジタル人材育成や、オンライン学習サービスの企画・開発、新規事業開発等を支援するスタディメーターの研究機関としての役割を担っており、参加メンバーは資金や学習機会の援助を受ける代わりに、本人の関心に基づいたサービスの開発や学習レポートの作成を行い、新技術に関する知見や新規事業創出の事例を同社に還元している。
「都会留学」の立案者は愛媛県の高校生
今回開催された「都会留学」の立案者は、First off Projectsに所属する愛媛県の高校生。本人は全国に拠点がある通信制高校に所属しており、愛媛と東京の二拠点生活を行っているという。
その経験の中から「地方留学はあるのに、なぜ都会留学はないのか」という疑問を持ち、同企画を立案したそうだ。
今回は実証実験のため、First off Projectsを運営するスタディメーターが渡航費を出資する形で、愛媛県に住む2人の高校生を、3月26日(火)~4月1日(月)の6泊7日で東京に招待し、都会の生活体験を提供した。
自分にあった生活拠点を考えるきっかけづくり
同社によると、進学や就職を機に地方から都会へ移住する人の多くは「なんとなく都会の方が便利そう」「田舎は何もない」という思い込みを抱えているとのこと。実際、愛媛県には、県外で就職したい理由の第1位が「あこがれを感じるから」というデータ(※1)があるが、都会に行った後にミスマッチを感じ、地元に戻りたいと考える人もいるという。
都会に行く理由「なんとなく」「何もない」は、個人の経験不足が元になっているという。実際に都会の生活を体験する機会が必要だという考えのもと、「都会留学」では、ただ都会を見たり、生活に慣れたりするだけではなく、都会でのリアルな生活を通じて、地元の魅力を再発見し、自分にあった生活拠点を考えるきっかけづくりになることを目指したとのことだ。
このような背景から、都会留学のプログラムは、一般的な観光旅行や修学旅行とは違った視点で設計。全日程を通して、愛媛と東京どちらの生活も知る主催の高校生がガイド役となり、朝のラッシュ時間帯の電車に乗る、Uber Eatsを利用する、といった都会では当たり前の生活体験のほか、東京に住む高校生や、上京してきた大学生とのディスカッションを通じて、都会に暮らす人と考え方・価値観を共有するといった、様々なアクティビティを行った。
特に、大学生とのディスカッションは、大学生を中心としたさまざまなコンセプトのコミュニティを運営する団体「COAs」との連携により実現。ディスカッションは、同団体が運営する中高生向け無料自習室「杉並まちの自習室」にて行われた。
「都会留学」で生徒の気持ちに変化が
また、プログラムの性質上、繁華街や夜間の移動も重要であったため、参加者にGPS端末を配布して互いに位置情報が見えるようにするなど、安全面にも配慮。参加者は毎日レポートを提出し、帰宅後の1週間後にも気持ちの変化を報告した。
当初「将来は東京に住みたい」と考えていた参加者たちは、実際に東京で生活する中で、交通網の複雑さや実家からの遠さを実感したとのこと。これにより、以前は便利だと思っていた東京の実際の様子を知り、都市の中でも故郷に近い場所に住みたいと感じるようになったり、東京は住む場所ではなく訪れる場所として捉えたりと、気持ちに変化が生じたようだ。
また保護者からも「大学進学時にいきなり4年間都会で一人暮らしを始めるよりも、事前に体験できるのは安心」という声が上がり、「都会留学」は、本人のみならず、子どもを都会に送り出す親にとっても有益な取り組みであることがわかったという。
First off Projects:https://fops.studymeter.jp
スタディメーター:https://studymeter.jp
(※1)テレビ愛媛「人口減少 なぜ愛媛を離れる?女子大学生の本音 20代女性の県外流出多く…戻りたい若者への支援で歯止めを」
URL:https://www.fnn.jp/articles/-/653822
(佐藤ゆり)