
岐阜県飛騨市は、趣ある飛騨古川の町並み継承と地域の魅力を独自の視点で発信するガイドブックシリーズの最新作『飛騨古川タウントレイル3~「そうば」と町並みを読み解く~』を、5月より「飛騨の匠文化館」で販売している。
地域全体の景観意識を未来へ高めていく独自の取組み
「タウントレイル」とは、行政主導で作られる一般的な観光ガイドブックとは異なり、イギリスを発祥とする「住民主導による町の総点検」を形にしたガイドブック。
飛騨市古川町ではこの手法をさらに進化させ、「地域住民」「行政」に、専門的な知見を持つ「研究機関(大学)」を加えた三者連携による独自の取組みを行っている。

住民が自らの町を歩き点検する主観的なプロセスに、大学による客観的・学術的な視点が合わさることで、普段の暮らしの中では「当たり前すぎて気づかなかった景色の価値」を再認識し、地域全体の景観意識を未来へ高めていくことを目指している。
町並みを支える住民の精神性「そうば(相場)」
これまでに発行された『飛騨古川タウントレイル』は、1993年の初版(町並み・まちあるき編)および2006年の第2弾(木組・町並みの隠れた宝物編)において、飛騨古川の町並みの特徴や飛騨の匠が誇る建築技術に焦点を当ててきた。
そして第3弾でスポットを当てたのは、かつて作家・司馬遼太郎が『街道をゆく』の中で、「みごとなほど、気品と古格がある」と称賛した飛騨古川の美しい建物や町並みを背後で支え続けてきた住民の精神性「そうば」。
飛騨古川の町並みは、ただ古い建物をそのまま保存しているだけで成り立っているわけではない。新旧の町家が混在しながらも、全体として心地よい調和が保たれている背景には、自分の家だけを際立たせるのではなく、町全体の景観に気遣う「思いやりの心(=そうば)」が脈々と受け継がれているからだろう。
3年間にわたる調査研究の成果を凝縮した一冊
『飛騨古川タウントレイル』第3弾は、飛騨市、新潟大学、そして地域住民が三位一体となり、2023年度から3年間にわたり重ねた調査研究の成果を全36ページに凝縮した特別な一冊だ。
一般的に伝統的町並みは条例などの建築基準に基づいて修景されるが、飛騨市古川町は明確な基準がない中で、住民の景観意識により新旧の町家が混在しつつも統一感ある「生きた町並み」が形成されている。
その意識を紐解くため、2023年度から飛騨市と新潟大学都市計画研究室(松井大輔准教授)が連携し、景観に対する住民意識の調査研究を実施。古川町市街地の住宅や店舗(抽出)の施主、大工、設計士に対して外観施工時の意識についてヒアリング調査を行い、地域全体としての景観意識を言語化し、まとめている。

『タウントレイル3』の原稿素案を制作する新潟大学の学生
また、人口減少に伴う町家解体で表出した「土蔵」に着目し、景観の新たな構成要素として、土蔵の現状や用途、住民意識、課題を調査研究。
それらの研究結果を基に原稿素案を制作している。

「まち歩きワークショップ」で意見交換
2025年7月には、地域住民と共に原稿素案を手に「まち歩きワークショップ」を開催。
地域住民の意見交換を反映し、今年3月に『飛騨古川タウントレイル』第3弾が完成した。

古川の住民意識「そうば」とは、個性を尊重しつつも周りとの調和を重んじる「思いやりの心」であり、誌面では個々の建築様式がどのように周囲と歩調を合わせているかをイラストと解説で紹介。
技術的な側面だけでなく、人々の暮らしの体温を感じられる内容だ。
担当者のコメント
飛騨市の担当者は、『飛騨古川タウントレイル』第3弾について「飛騨古川の町並み景観を築き上げた住民精神『そうば』を、思いやりの心という言葉で可視化することができました。住民の皆さまには、日々暮らしている古川の町並みが、どれほど貴重で世界に誇れる価値があるものなのかを改めて知っていただき、これからも一緒に町を綺麗に大切にしていきたいです。
そして観光客の皆さまには、美しい町並みの裏側にある人々の温かい想いに触れ、古川のファンになっていただければこれ以上の喜びはありません。ぜひ本書を手に、奥深い飛騨古川を旅してください。」とコメントしている。
『飛騨古川タウントレイル3~「そうば」と町並みを読み解く~』で、奥深い飛騨古川の魅力を再発見してみては。
■『飛騨古川タウントレイル3~「そうば」と町並みを読み解く~』
仕様:B5判/全36ページ
販売部数:200部
販売価格:1冊500円(税込)
販売場所:飛騨の匠文化館
■飛騨の匠文化館
住所:岐阜県飛騨市古川町壱之町10-1
営業時間:9:00~17:00(16:30最終入館) ※12~3月は9:00~16:30(16:00最終入館)
定休日:木曜日、年末年始
飛騨市公式サイト:https://www.city.hida.gifu.jp
(yukari)