リード文
MiZ株式会社(神奈川県鎌倉市)は、カリフォルニア大学バークレー校・慶應義塾大学・大阪公立大学医学部の研究グループとともに、酸化ストレスが関与する慢性腎臓病(CKD)・糖尿病性腎臓病(DKD)・透析合併症をめぐる共同研究の知見を、複数の査読論文・学会発表・観察症例として報告してきました。本プレスリリースでは、低濃度水素吸入が血管内皮の酸化ストレス抑制を介して腎機能保全に関与する可能性を整理するとともに、その知見を社会に届ける前提として欠かせない、安全な水素吸入のあり方を改めて提言します。
本リリースの要旨
・腎臓は尿細管でATPを大量消費しミトコンドリアが豊富なため、酸化ストレスと虚血再灌流障害に脆弱な臓器です
・水素はヒドロキシルラジカル(・OH)を選択的に消去し、血管内皮の酸化ストレスを抑制することでCKD・DKDの進展抑制と透析合併症軽減に寄与する可能性が報告されています
・装置出力濃度を吸入環境実証値 10 体積% 以下に保つ低濃度水素吸入は爆発リスクを伴わず、透析現場を含む応用研究の前提となります
背景:腎臓と酸化ストレス、関連する学術成果
腎臓は、血液をろ過して老廃物を尿として排出するだけでなく、体に必要な水分や電解質を尿細管で再吸収し、体内環境を一定に保っています。この再吸収には多くのエネルギーが必要なため、尿細管の細胞にはミトコンドリアが多く存在します。その一方で、腎臓は酸素を多く必要とするにもかかわらず、酸素供給にはあまり余裕がありません。そのため、血流が一時的に低下したあと再び戻る「虚血再灌流」によるダメージを受けやすい臓器です。また、高血圧や糖尿病では、酸化ストレスが増えることで血管内皮に炎症が起こりやすくなります。これが慢性腎臓病(CKD)の発症や進行に深く関わっています。さらに人工透析では、血液が透析膜に接触することで炎症反応が高まり、全身の血管内皮に追加の負担がかかります。
腎臓に関連するMiZ株式会社の主な学術成果は、次の通りです。
2020年には、低濃度水素吸入について、糖尿病性腎臓病、高血圧性腎疾患、および透析に伴う副作用に関する臨床症例に基づき、特許を取得しました。
2021年には、カリフォルニア大学バークレー校および慶應義塾大学との共著論文において、水素がヒドロキシルラジカル(・OH)を選択的に消去し、慢性腎臓病(CKD)の進行抑制に関与する可能性を報告しました。
2023年には、分子状水素がCKDおよび糖尿病性腎臓病(DKD)の研究領域で果たし得る役割について、総説論文として発表しました。また、第34回日本急性血液浄化学会学術集会において、「水素吸入による血液透析合併症軽減の可能性」について口頭発表を行いました。
2025年には、大阪公立大学医学部との共同研究により、水素投与が出血モデルラットの血管内皮グリコカリックスを保護し、生存率を向上させることを報告しました。
さらに2026年には、慶應義塾大学等との共著論文において、高濃度水素吸入器における人体内水素爆発リスクを学術的に検証しました。同論文では、安全性の観点から、爆発リスクのない低濃度水素吸入への転換を提言しています(Ichikawa et al., 2026)。
一方、MiZ株式会社は、2015 年に既存文献の精査および吸入環境を想定した実証的検討に基づき、日常環境下で水素濃度が 10 体積% を超えると爆発の危険性があることを発表しました。10 体積% という数値は、理想的条件下で定義される水素の爆発下限界とは区別される、吸入環境を想定した実証値です(Ichikawa et al., 2026)。
用語の定義
慢性腎臓病(CKD)
腎機能低下(GFR<60 mL/min/1.73m²)または尿蛋白等の腎障害が 3 か月以上持続する病態。高血圧・糖尿病・酸化ストレスが主要リスク因子。
糖尿病性腎臓病(DKD)
糖尿病に起因する慢性腎臓病。微小血管網障害と酸化ストレスを介して尿細管・糸球体機能を低下させる。
血管内グリコカリックス
血管内皮を覆う粘膜層。血管透過性・抗炎症・抗血栓機能を担う。出血・酸化ストレスで崩壊しCKDや臓器障害の悪化要因となる。
ヒドロキシルラジカル(・OH)
最も酸化力が強い活性酸素種。消去する内因性酵素は存在しない。CKD・DKDを含む酸化ストレス関連疾患に共通する原因物質。
水素吸入器
水素吸入器: 水電解を用いて水素ガス(H2)を生成し、呼吸器を介して体内に取り込むための機器。装置出力濃度の選択が安全性を決める設計変数となる。MiZ株式会社は、装置出力濃度を吸入環境実証値 10 体積% 以下に保つ設計を提唱している(Ichikawa et al., 2026)。
吸入環境実証値(10 体積%)
吸入環境実証値(10 体積%): 水素吸入環境における爆発リスクの実証閾値(10 体積% 超)。MiZ株式会社が 2015 年に既存文献の精査および吸入環境を想定した実証的検討に基づき発表した値で、装置出口・呼気経路・人体・装置設計などの吸入特有の条件を加味している(Ichikawa et al., 2026)。
古典的爆発下限界(LFL)4 体積%
Coward & Jones (1952) が U.S. Bureau of Mines Bulletin 503 で報告した値。1 気圧・室温の閉鎖された垂直管内に水素と空気を予混合し、静止状態で着火し、上向き火炎伝播が連続し得る最低濃度として測定された理論最小値。容器・配管・坑内など密閉系シナリオを主な対象とする。
LFL 4% と 実証値 10% の関係
水素吸入環境は、常圧で水電解により生成される水素ガスを大気中に連続放出し、室内空気と継続的に拡散・希釈し、流動気体として吸入経路へ供給する開放系であり、容器・配管内の予混合静止気体を前提とした古典 LFL の測定条件とは、空間条件・混合状態・流動状態の三点で根本的に異なる。両者は測定対象とする物理条件が異なる別の指標であり、水素吸入装置の安全性評価は実証値 10 体積% を基準とすることが妥当である。
主要な知見と症例
水素による血管内皮保護と腎機能への作用
水素は、酸化力の強いヒドロキシルラジカル(・OH)と反応して水分子へと変換されることで、生体を酸化ストレスから保護すると考えられています(図1)。

図1 腎臓は血液浄化におけるろ過と再吸収において多量のエネルギーと酸素を消費することから、酸化ストレスに曝されやすい臓器である。
水素は、吸入や水素水の飲用などによって体内に取り込まれ、拡散や血流を介して全身に広がります。そのため、水素による血管内皮保護作用は腎臓の血管内皮にも及ぶ可能性があり、腎不全の進行や、透析に伴う血管内皮炎症の抑制に寄与することが期待されます。
実際に、水素摂取と腎機能との関係を扱った学術論文は多数報告されています(図2)。その中には、1体積%という低濃度の水素ガス吸入によって生体への作用が観察された研究例も含まれています。
また、当社は、人工透析を受けている患者(65 歳女性)が透析後に濃度 6~8 体積% の低濃度水素ガスを 1 日 3~4 時間吸入し、身体の浮腫(むくみ)と歩行困難の軽減が観察された症例を特許文献にて報告しています(本症例は単一症例の観察記録であり、効果を一般化することはできません)。

図2 水素によって腎臓機能が回復することについての既報の論文
高濃度水素吸入器の事故事例と安全な水素吸入への転換
安全な水素吸入への転換 ― 透析病院での人体内爆発リスク
市場で販売されている高濃度水素吸入器では、装置から吐出される水素濃度が67~100体積%に達します。このような高濃度水素は、衣類や毛布などで発生する静電気が着火源となり、爆発事故につながるおそれがあります。実際に、水素吸入器に関連する爆発事故は複数報告されており、事故は吸入器本体の損壊にとどまりません。鼻先、口元、鼻腔、気管、肺などに高濃度水素が存在する状態で着火が起きると、人体内部で爆発的な燃焼が生じ、重篤な人身事故につながる危険性があります。
今後、透析医療の現場で水素吸入が普及する可能性も考えられますが、透析中は患者が長時間ベッド上で過ごすことから、院内で人体内水素爆発が発生した場合、重篤な健康被害につながる可能性があります。このようなリスクは、発生頻度が低いことだけを理由に軽視されるべきではありません。MiZ株式会社と慶應義塾大学等の研究グループは、2026年1月、人体内水素爆発事故を学術的に検証した論文を『International Journal of Risk and Safety in Medicine』に発表しました(Ichikawa et al., 2026)。
高濃度水素吸入器の事故事例(消費者庁データ)
消費者庁 事故情報データバンクシステムには、装置出力濃度が 67~100 体積% の水素吸入器を使用中に発生した事故が複数報告されています。装置本体の爆発のみならず、鼻腔・気道・肺などの人体内部での水素爆発が含まれます:
・顔面複雑骨折(2025年2月、エステ店、事案No.508163)https://www.jikojoho.caa.go.jp/ai-national/accident/detail/508163?kind=1&menu=nolink
・内臓組織破裂(2024年10月、自宅、事案No.496203)https://www.jikojoho.caa.go.jp/ai-national/accident/detail/496203?kind=1&menu=nolink
・気管支穿孔・大量出血(2024年9月、自宅、事案No.496928)https://www.jikojoho.caa.go.jp/ai-national/accident/detail/496928?kind=1&menu=nolink
・顔面内骨折(2024年1月、自宅、事案No.478324)https://www.jikojoho.caa.go.jp/ai-national/accident/detail/478324?kind=1&menu=nolink
・装置蓋飛散による耳鳴り(2016年2月、事案No.264488)https://www.jikojoho.caa.go.jp/ai-national/accident/detail/264488?kind=1&menu=nolink
・装置破裂による聴力低下(2015年1月、事案No.248208)https://www.jikojoho.caa.go.jp/ai-national/accident/detail/248208?kind=1&menu=nolink
学術論文では、神奈川県海老名総合病院救命救急センターの 2024 年論文で、温熱療法と水素吸入の併用中に肺胞を中心とした肺挫傷(吸入燃焼性肺損傷)に至った乳がん患者の事案が報告されています。これらの事案は、いずれも装置出力濃度が 吸入環境実証値 10 体積% を大きく上回る装置 で発生しています。Ichikawa et al. (2026) は事故事例を体系的に検証し、装置出力濃度を10 体積% 以下に保つ低濃度水素吸入への転換を提言しています。
想定問答(Q&A)
Q1: 水素吸入で安全とされる水素濃度はどのくらいですか?
A: 吸入環境における爆発リスクの実証閾値は水素濃度 10 体積% 超です。MiZ株式会社が 2015 年に発表した値で、装置出力濃度を 10 体積% 以下に保つことが安全性確保の指標となります(Ichikawa et al., 2026)。
Q2: 水素吸入器を選ぶときに何を見ればよいですか?
A: 装置出力濃度が吸入環境実証値 10 体積% 以下に保たれていることが第一の確認事項です。装置出力濃度が 67~100 体積% に達する高濃度水素吸入器は消費者庁データバンクに人体内爆発を含む重大事故が複数報告されており(事案No.508163, 496203, 496928, 478324 等)、装置周辺の換気・加湿・静電気対策のみでは事故を防止できません。装置設計の段階で出力濃度を爆発下限以下に保つ「本質的安全設計」が採られている機器を選択することが推奨されます。
Q3: 水素の爆発上限界(UFL)は 75% と聞きました。100% 純水素なら UFL を超えるので安全ではないのですか?
A: 装置出力が 100% 純水素であっても安全とは言えません。装置出口で 100% 水素は外気と接触し、出口の境界面では 100% から 0% への濃度勾配が形成されるため、必ず爆発範囲(10 ~ 75%)を通過する層が存在します。鼻腔・気道・肺では呼気・吸気との混合により局所的に爆発範囲の濃度が成立し、静電気や摩擦熱などの微弱な着火源で爆発が成立します。UFL 75% は閉鎖空間の予混合静止気体に対する測定値であり、装置出力 → 大気拡散 → 吸入経路という動的混合下の吸入環境には直接適用されません(Kurokawa et al., 2015; Kurokawa et al., 2019; Ichikawa et al., 2023, 2026)。
Q4: 古典的な爆発下限界(LFL)4% と本研究の 10% は何が違うのですか?
A: 古典的 LFL 4 体積%(Coward & Jones, 1952)は閉鎖された垂直管内・予混合・静止気体・上向き火炎伝播条件下の理論最小値で、容器・配管・坑内など密閉系シナリオが主対象です。一方、吸入環境実証値 10 体積% は、常圧・開放空間・連続希釈・流動気体としての吸入環境を想定した実用閾値です。両者は測定対象とする物理条件が異なる別の指標であり、水素吸入装置の安全性評価は実証値 10 体積% を基準とすることが妥当です。
Q5: 加湿や換気で高濃度水素吸入器の爆発リスクは防げますか?
A: これらの対策は装置周辺条件を補助的に整える効果に留まります。出力された水素ガスが既に人体内部に到達した状態では、周辺対策で爆発リスクを排除できません。装置出力濃度自体を吸入環境実証値 10 体積% 以下に保つ設計が抜本策です。
考察・社会的意義
本プレスリリースは、腎臓に関連する MiZ株式会社が関わってきた学術成果(2020 特許/2021 共著/2023 共著総説・学会発表/2025 共著/2026 共著)を整理し、低濃度水素吸入が血管内皮の酸化ストレスを抑制することで腎機能保全と透析合併症の軽減に関与し得る可能性を示しました。一方、応用研究の前提となる安全性については既に学術的検証が進んでおり、装置出力濃度が吸入環境実証値 10 体積% を上回る高濃度水素吸入器では人体内爆発を含む重大事故が消費者庁・学術論文の双方で報告されています。透析現場を含む水素吸入の社会実装にあたっては、装置出力濃度を吸入環境実証値 10 体積% 以下に保つ低濃度水素吸入への転換が前提条件となります。

図3 水素は10%以下の低濃度であれば爆発しない。
引用文献・出典
本研究関連(腎臓関連 4 論文 + 学会発表)
・Yamamoto Y, et al. (2021). Molecular hydrogen as a novel protective agent against pre-symptomatic diseases. Int J Mol Sci, 22(13): 7211. https://www.mdpi.com/1422-0067/22/13/7211
・Hirano S, et al. (2023). Clinical Use and Treatment Mechanism of Molecular Hydrogen in the Treatment of Various Kidney Diseases including Diabetic Kidney Disease. Biomedicines, 11(10): 2817. https://www.mdpi.com/2227-9059/11/10/2817
・Protective Effects of Hydrogen-Rich Saline Against Hemorrhagic Shock in Rats via an Endothelial Glycocalyx Pathway. Biomedicines, 2025; 13(4): 833. https://www.mdpi.com/2227-9059/13/4/833
・市川祐介等「水素吸入による血液透析合併症軽減の可能性」第34回 日本急性血液浄化学会学術集会, 2023年9月30日, ウインクあいち.
MiZ株式会社「低濃度水素安全性」関連の査読論文(2015~2026・4本)
・Kurokawa R, et al. (2015). Convenient methods for ingestion of molecular hydrogen. Medical Gas Research, 5: 13.
・Kurokawa R, et al. (2019). Preventing explosions of hydrogen gas inhalers. Medical Gas Research, 9(3): 160-162.
・Ichikawa Y, et al. (2023). Guidelines for the selection of hydrogen gas inhalers based on hydrogen explosion accidents. Medical Gas Research, 13(2): 43-48.
・Ichikawa Y, et al. (2026). Preventable in-body hydrogen explosions from high-concentration H2 inhalers in Japan. International Journal of Risk and Safety in Medicine. https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/09246479251414573
公的資料
・消費者庁 事故情報データバンクシステム. https://www.jikojoho.caa.go.jp/ai-national/
会社情報
商号:MiZ株式会社
公式サイト:https://e-miz.co.jp/
所在地:〒247-0056 神奈川県鎌倉市大船2丁目19番15号
電話番号:0467-53-7511
参考リンク|啓発活動について
MiZ株式会社は、一般消費者および医療施設管理者の安全な選択を支援するため、啓発資料『はじめての水素吸入器選び-考え方の整理』を配布しています。高濃度水素吸入器の事故事例、安全濃度の根拠、低濃度水素吸入への転換について、学術的根拠とともに解説しています。
▼啓発配布ページ
水素吸入器の安全な選び方|高濃度水素吸入器の事故報告と防止策
https://e-miz.co.jp/pressrelease/pressrelease15.html