ファブ運営コストの最大30%がエネルギー、顧客のスコープ3削減要求が差別化要因に
A.T. カーニー株式会社(東京都港区、日本代表:針ヶ谷 武文)は、論考「半導体サステナビリティ実現への参画」を公開しました。
本稿では、半導体チップがグリーンエネルギー転換を支える一方で、その製造プロセス自体は排出集約型であり、環境負荷が大きいという構造的な課題を指摘しています。顧客企業がスコープ3を含むネットゼロ目標を掲げる中、半導体メーカーには、電力使用、排出、水使用、化学物質、廃棄物など幅広い領域で持続可能な取り組みを進めることが求められています。
具体的には、ファブ運営コストの最大30%をエネルギー使用量が占めること、TSMCが台湾全体の電力消費の約5%を占めること、半導体向け排ガス処理システム市場が2023年の約8億5,000万ドルから2029年には17億ドルへ倍増する見通しであることが示されています。本稿は、AI・機械学習によるプロセス最適化、再生可能エネルギー対応ファブ設計、排ガス処理、部品輸送の最小化、グリーンケミストリーなどを組み合わせる必要性を提言しています。
最大30%がエネルギー、半導体製造の電力負荷が脱炭素の焦点に
半導体産業は、太陽光パネルや電気自動車などのグリーンエネルギー転換を支える一方で、チップ製造のプロセス自体は排出集約型です。医療、自動車、テクノロジー、通信、航空宇宙・防衛、金融など、チップやデータセンターに依存する企業がスコープ3を含むネットゼロ目標を設定する中で、半導体メーカーにもより高い透明性とデータ開示が求められています。
本稿では、グリーンフィールド設計において、建設初期段階からグリーン建設、グリーン素材、グリーンプロセス、グリーンエネルギーを採用し、スマートセンサーなどの技術を統合することで、ファブ運営コストの最大30%を占めるエネルギー使用量を削減できるとしています。TSMCが台湾全体の電力消費の約5%を占めていることも、半導体製造における電力負荷の大きさを示すものとして挙げられています。
2029年17億ドルへ倍増、排ガス処理市場と税制優遇が投資を後押し
排ガス処理システムは、チップ製造工程で発生する有害排出物を捕集・中和する技術です。本稿では、ドライベッド処理、湿式スクラビング、ウェットバーン・ウェット技術などに加え、長期的には直接空気回収(DAC)、蒸気回収装置(VRU)、ブローダウン回収など、既存設備の改修を含めた投資が求められるとしています。
半導体向け排ガス処理システム市場は、2023年の約8億5,000万ドルから2029年には17億ドルへ倍増すると見込まれます。また、米国のインフレ抑制法(IRA)では、商業ビルの省エネ改修に対して最大50%の費用控除、太陽光パネルや風力タービン、燃料電池、蓄電設備などの導入に対して最大30%の税額控除が用意されています。
CCSグローバル・インスティテュートの費用対効果分析によれば、CCSは2045~2050年にかけて経済的に成立すると予測されています。現在、米国の炭素回収・貯留能力の稼働率は25%にとどまるものの、今後10年で50%拡大すると見込まれています。
6つの施策を優先順位付け、導入難易度とGHG削減効果で投資判断へ
本稿は、半導体メーカーおよびそのパートナーが取り組めるサステナビリティ施策を、導入難易度と温室効果ガス(GHG)への影響度に基づき、四つのカテゴリーに整理しています。導入が容易でGHG影響が小さい施策としては、AIや機械学習を活用したプロセス最適化が挙げられます。
導入が容易でGHG影響が大きい施策としては、再生可能エネルギー対応ファブ設計(グリーンフィールド)や排ガス処理システムが示されています。一方、導入が難しくGHG影響が大きい施策としては、既存施設のブラウンフィールド改修、部品輸送の最小化、グリーンケミストリーへの移行が挙げられています。
グリーンケミストリーへの移行は、今後10~20年にわたり進展すると見込まれます。半導体のサステナビリティへの移行には、政策、イノベーション、事業戦略、産業横断的な協働にまたがる包括的な解決策が必要であり、環境責任にとどまらず、コスト削減、規制対応、将来への備えという観点からも重要だと本稿は指摘しています。

- 論考について
論考名:「半導体サステナビリティ実現への参画」
URL:https://www.jp.kearney.com/issue-papers-perspectives/chip-in-for-semiconductor-sustainability
- 監修者
西川 覚也 シニアパートナー
東京大学工学部卒。特許事務所を経て、A.T. カーニー入社。現在の技術軸に新しい技術軸を足して、需要を創造するM&A戦略、IoTを梃にした新しい価値の創造(ビジネスモデル、オペレーションモデル)を支援。
竹井 潔 プリンシパル
MITスローン経営大学院修了(MBA)。東芝(現キオクシア)半導体事業の経営企画部門で、事業戦略立案や海外企業との提携交渉に従事したのち、KEARNEYに入社。通信、ハイテク領域を中心に、全社戦略、事業ポートフォリオ変革、新事業開発、M&A戦略等のテーマを手掛ける。クロスボーダーのプロジェクトリードが可能。経済産業省 JAXA部会委員。
A.T. カーニーについて
A.T. カーニー(グローバル・ブランド名:Kearney)は、100年にわたり世界有数の経営コンサルティングファームとして、Fortune Global 500企業の4分の3以上をはじめ、世界各国の政府機関に信頼されるパートナーであり続けてきました。40カ国以上に拠点を展開し、私たちの最大の強みは「人」にあります。インパクト・ファーストを掲げ、独創的な発想と実行力をもって、顧客企業が直面する最も困難な課題に挑み、変革の実現をともに推進します。日本には1972年に進出し、あらゆる主要産業のリーディングカンパニーに対し、戦略策定から変革の実行まで一貫した支援を提供しています。詳しくはWebサイトをご覧ください。https://www.jp.kearney.com/