人的資本経営の実装は道半ば、4割弱の企業が未着手と明らかに
日本の経営コンサルティングのパイオニアである株式会社タナベコンサルティング(本社:東京都千代田区・大阪市淀川区、代表取締役社長:若松 孝彦)は、全国の企業経営者、役員、経営幹部、管理職、人事責任者・担当者を対象に実施した「2026年度 人材・組織の取り組みに関する企業アンケート調査」の結果を発表いたします。
1.調査結果サマリー
(1) 経営に最も影響を与えている要因は「コスト上昇」(42.2%)と「人手不足」(30.4%)が上位を占め、両項目で7割超えという結果となりました。
(2) 人的資本経営の取り組みでは「特に取り組みを行っていない」との回答が最多を占め、全体の約4割弱がいまだに着手できていない状況が明らかとなりました。一方、専任役職を設置している企業は「経営戦略と人材戦略の連動」と「人的資本KPIの設定・運用」を合わせた割合が5割を超え、人事体制の整備が人的資本経営の実装度を左右する重要な変数となっております。
(3) 離職が発生する主な理由は「処遇・待遇への不満」(48.1%)が最多で、前年から8.0ポイント上昇しております。
2.各データ詳細
(1)コスト上昇と人手不足が経営に最も影響を与えている。

経営に最も影響を与えている要因は「原材料費や人件費などのコスト上昇」(42.2%)であり、2025年(35.5%)から6.7ポイント上昇しております。「人手不足・採用難の深刻化」(30.4%)が続き、両項目で7割以上を占める結果となりました。コスト上昇と人手不足が同時に進行する中、価格転嫁による収益確保と、賃上げや生産性向上を通じた人材確保の取り組みを一体で検討する必要性が一層高まっております。
(2)業績水準によって注力すべきHR戦略領域が明確に分岐する結果に。

業績別に今後注力すべきHR領域を見ると、好調企業では「次世代リーダーの育成」(27.6%)が最も高く、将来の成長を担う人材投資に軸足を置く姿勢が表れております。一方、不調企業では「人材の定着・エンゲージメント向上」と「教育・研修の強化(リスキリング強化含む)」がいずれも23.4%と高く、既存人材の戦力化と離職防止を優先する傾向が強いことがわかります。自社の業績状況を踏まえ、限られた経営資源を有効に活用するためにHR戦略の重点を定めることが重要となります。
(3)人的資本経営の実装は道半ば。4割弱が「特に取り組みを行ってない」と回答。

人的資本経営の取り組みでは「特に取り組みを行っていない」との回答が37.4%と最多を占め、全体の4割弱がいまだ着手できていない状況にあることがわかりました。実施している企業の内訳を見ても、「リスキリングへの取り組み」(28.5%)、「経営戦略と人材戦略の連動」(26.9%)、「人的資本KPIの設定・運用」(22.3%)はいずれも2割台にとどまり、突出した施策は見られません。特定の打ち手に集中投資するというより、各社が手探りで複数の取り組みを並行して模索している段階にあり、人的資本経営を体系的に推進する「型」の確立が今後の課題となっております。
(4)専任のCHRO・HRBPを設置している企業ほど、人的資本経営の実装が進む結果に。

人事体制別に人的資本経営の実施状況を見ると、専任のCHRO(最高人事責任者)・HRBP(HRビジネスパートナー)を設置している企業では「経営戦略と人材戦略を連動させ、人事制度・仕組との一貫性を図っている」(26.0%)と「人的資本KPIを設定し、運用している」(26.0%)を合わせた割合が5割を超え、「特に取り組みを行っていない」も8.2%と相対的に低く、人的資本経営の実装が着実に進んでいることがうかがえます。人事部門を設置している企業もこれに次ぐ水準にあり、人事の専任化・戦略機能の有無が人的資本経営の実装度を左右する重要な変数となっております。
(5)「マネジメント層⇔現場」の社内コミュニケーションギャップは企業規模を問わず最多。共通課題として浮き彫りに。

企業規模別に社内コミュニケーションギャップの構成比を見ると、「幹部・マネジメント層⇔現場」が中小企業(33.1%)、中堅企業(31.1%)、大企業(28.0%)のいずれにおいても最多を占め、規模を問わない共通課題であることがわかります。一方、「管理部門⇔事業部門」は中堅企業(14.2%)・大企業(15.4%)が中小企業(9.9%)に比べて高く、組織・拠点の分散が進む中での構造的な課題がうかがえます。
(6)育成強化の重点は中堅・リーダー層と管理職層に集中。2年連続で高水準。

今後特に育成を強化したい階層は「中堅・リーダー社員」(48.9%)が最多で、「管理職」(26.6%)が続きます。2025年度の調査結果(中堅・リーダー45.5%、管理職31.4%)に引き続き、次代を担う中核層への育成関心が高い水準で継続しております。若手社員は12.4%にとどまっており、組織変革を推進するうえで、中堅・リーダー層と管理職が経営方針を理解し、現場を動かせるかが鍵となります。
(7)企業規模を問わず「次世代リーダー育成」が最優先テーマ。中堅企業では管理職強化への関心も高い傾向に。

今後強化したい育成テーマを企業規模別に見ると、いずれの規模でも「次世代リーダー育成」が最も高く、将来の経営を担う人材の育成が規模を問わず共通の最優先テーマとなっております。特徴的な点は、中堅企業では「管理職のマネジメントスキル強化」(27.0%)が中小企業(21.9%)・大企業(17.7%)より高い点であり、組織規模の拡大に伴い現場を束ねる管理職の底上げが課題となっている様子がうかがえます。大企業では「DX・デジタルリテラシー習得」(16.1%)や「キャリア自律とキャリア形成支援」(14.5%)が相対的に高く、デジタル対応と個人の自律的成長への投資が進んでおります。
(8)「処遇・待遇への不満」が前年比8.0ポイント上昇し、離職理由の最大要因に。「上司・同僚との人間関係」を上回る。

離職が発生する主な理由は「処遇・待遇への不満」(48.1%)が最多で、2025年(40.1%)から8.0ポイント上昇しております。「キャリア展望の不透明さ」(35.5%)も前年(32.2%)から3.3ポイント上昇した一方、「上司・同僚との人間関係」(38.4%)は前年(43.4%)から5.0ポイント低下しており、離職防止の焦点は人間関係から処遇・キャリアパスの明示へと移りつつあります。待遇改善とキャリア形成支援を軸とした対応が、今後の定着施策における優先課題となっております。
3.総括・提言
(1)経営戦略と連動した人材戦略への転換による打ち手の最適化
コスト上昇と人手不足が同時に進行する中、賃上げ原資の確保と人材への投資に対する経営の意思決定が重要です。一方で、人的資本経営の実装は道半ばであり、業績や規模によって打つべき手も異なります。画一的な制度導入ではなく、自社の業績局面と経営戦略に接続した人材戦略を策定し、それを推進する人事体制を整備することが出発点となります。
(2)働き手の価値観変化に対応した採用・処遇戦略の見直し
離職の主因は人間関係から処遇・キャリアへと移行しており、対話や職場環境の整備だけでは定着を維持できない局面に入っております。採用においてはマッチする人材の見極めが重視されておりますが、入口の精度を高めても、処遇と将来のキャリアパスが伴わなければ定着にはつながりません。報酬水準の見直しとキャリアの明示を軸に、採用・育成・処遇を一貫した人材フローとして設計し直すことが求められます。
(3)マネジメント層と現場のコミュニケーションギャップ解消によるエンゲージメント向上
幹部・マネジメント層と現場のコミュニケーションギャップは規模を問わず最大の断絶要因であり、人材戦略を描いても現場に浸透しなければ成果には結びつきません。また、組織の拡大とともに離職や組織状態の把握は難しくなり、打ち手の判断材料が不足しやすい傾向にあります。階層間の断絶を埋める対話と組織実態の把握を土台に、施策の優先順位づけと効果検証を継続的に行うことが、人材戦略を機能させる組織基盤となります。
〈総括・提言 執筆者プロフィール〉

株式会社タナベコンサルティング
執行役員 HRコンサルティング事業部 盛田 恵介
セミナー責任者を経てコンサルティングに携わる。人づくりをデザインする総合プロデューサーとして、中堅・中規模企業の人事・教育制度構築から運用に至るまでトータルでサポート。特に、様々な業種・業態の企業内大学(アカデミー)設立コンサルティングの実績を有し、多くの社員の成長を促すプログラム開発にクライアントから高い評価を受けている。
4.関連リンク
・「2026年度 人材・組織の取り組みに関する企業アンケート」資料ダウンロードページ
URL:https://www.tanabeconsulting.co.jp/hr/download/hr-survey-report-2026.html
5.調査概要
[調査方法]インターネットによる回答
[調査期間] 2026年5月11日~5月29日
[調査エリア] 全国
[有効回答数] 372件
※各図表の構成比(%)は小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計しても100%にならない場合があります。
※本調査では、アンケートにご回答いただいた企業において、従業員規模が2,001人以上の企業を大企業、100人超~2,000人以下の企業を中堅企業、100人以下の企業を中小企業として分類し、分析を行いました

タナベコンサルティンググループ(TCG)について
TCGは、1957年創業の東証プライム市場に上場する日本の経営コンサルティングのパイオニアです。「企業を愛し、企業とともに歩み、企業繁栄に奉仕する」という経営理念のもと、未来の社会に向けた貢献価値として「その決断を、愛でささえる、世界を変える。」というパーパスを掲げております。現在は、グループ8社、970名以上のプロフェッショナル人材を有する経営コンサルティンググループとなり、国内外の中堅企業を中心とした大企業から中規模企業のトップマネジメント(経営者層)を主要顧客とし、創業以来22,100社以上の支援実績を有しております。
トップマネジメントアプローチで経営戦略の策定からプロフェッショナルDX/AXサービスによる経営オペレーションの実装・実行まで、チームコンサルティングにより経営の上流から下流までを一気通貫で支援する唯一無二の経営コンサルティングモデルを国内地域密着のみならず、グローバルへと展開しております。
