当社は、量子アプリケーション開発ソフトウェア「Open Quantum Application Research Package」(以下、OpenQARP(code name))をオープンソースソフトウェアとして、2026年9月15日にグローバルで一般公開を開始しました。
当社が開発した本ソフトウェアでは、当社独自の量子アルゴリズムを含む100種類以上のソフトウェア部品が利用可能であり、これらを組み合わせることで量子アプリケーション開発の大幅な効率化が期待できます。また、大規模HPC環境で構築された当社の量子シミュレータや量子・古典ハイブリッドコンピューティング向けのNVIDIAのCUDA-Qプラットフォーム(注1)などの様々な実行環境で利用可能です。当社は、本ソフトウェアの一般公開に先駆けて、他社との共同研究やQuantum Simulator Challenge(注2)を通して、本ソフトウェアのβ版を2026年2月より80団体以上に提供しており、既に多くの量子アプリケーションの研究開発成果の創出に活用されています。
今回、独自アルゴリズムを含む本ソフトウェアをオープンソースソフトウェアとして一般に公開することで、当社は量子ソフトウェアの社会実装を加速させ、量子技術を活用した社会問題解決の実現に貢献します。
背景
材料開発、金融最適化、医療や創薬など、社会の様々な領域において既存のコンピュータでは解決できない複雑な問題を解く方法の1つとして、量子コンピュータの活用が期待されています。当社は様々な業界のお客様との共同実証や大学、研究機関との共同研究を通して、具体的な量子アプリケーションの開発に取り組んできました。量子技術の社会実装の加速のためには、最先端のアルゴリズムを特定の問題ごとに実装するのではなく、広く再利用できることが求められます。そこで、当社は汎用性の高い量子アルゴリズムを部品として実装し、様々な業界における量子アルゴリズムの開発への活用を推進するための量子アプリケーション開発ソフトウェア「Open Quantum Application Research Package」(OpenQARP(code name))を開発しました。そして、量子技術の普及拡大に向け、本ソフトウェアをオープンソースソフトウェアとしてGitHub上で一般公開しました。
「Open Quantum Application Research Package」の特長
1.汎用的なソフトウェア部品の提供により実装作業を効率化
OpenQARP(code name)では、量子アプリケーション開発で汎用的に用いられる処理を、量子状態準備やパラメータ付き量子回路の構成要素から量子フーリエ変換まで、組み合わせて利用できる70種類以上のビルディングブロックを提供します。また、これらのビルディングブロックを用いて構成された20種類以上の実行可能なアルゴリズムを提供します。
これには、Subspace-Search Variational Quantum Eigensolver(注3)というNoisy Intermediate-Scale Quantum(注4)デバイス向けのアルゴリズムや、量子位相推定といったFault Tolerant Quantum Computing(注5)向けのアルゴリズムが含まれます。利用者は、これらの部品を目的に応じて組み合わせ、量子アプリケーション開発を行うことで、ソフトウェアの実装工数の抑制につなげられます。
当社も本ソフトウェアの社内実践を積極的に行い、その成果を公開しています。例えば、分子の電子状態を計算する量子化学アプリケーションの研究開発において、効率的な計算を可能にするADAPT-VQEアルゴリズムを使った処理を実装する際にPythonで約130行が必要になるところを、本ソフトウェアの部品を使用することにより、約40行に削減できた実績があります。これにより、量子アルゴリズムの実装負担を大幅に軽減し、研究者がアルゴリズムやアプリケーションの検証に注力できるようになります。
2.当社独自の先端アルゴリズムの提供により効率的な量子計算を実現
量子化学計算における量子回路の初期状態準備に必要な量子ゲート層の数(回路深さ)を削減可能な、古典コンピュータによる事前計算の結果を活用したUnitary pair Coupled Cluster Doublesアルゴリズムや、量子位相推定に必要となる複雑な入力状態の準備負担を軽減し、エネルギースペクトルに関する情報を効率的に取得するDensity of States Quantum Phase Estimationなど、当社独自の量子アルゴリズムも部品として提供します。
3.一般的なPCからGPU搭載システム、スーパーコンピュータなどの様々な実行環境への対応
OpenQARP(code name)は、Pythonが動作する一般的なPC環境に容易にインストールして、誰でも利用できます。また、ソースコードからビルドすることで、バックエンドとしてNVIDIAのCUDA-Qと連携でき、オープンなGPUアクセラレーション環境における量子回路実行が可能です。さらに、本ソフトウェアは当社が所有するプロセッサ「A64FX」(注6)を搭載したスーパーコンピュータ「FUJITSU Supercomputer PRIMEHPC FX700」1,024機で構成される40量子ビットの状態ベクトル型の量子シミュレータ環境でも利用できます。これまでにQuantum Simulator Challengeを通して80団体以上にこのスーパーコンピュータ環境を提供し、先行提供した本ソフトウェアのβ版で様々な量子計算が実行された実績があります。また今後、当社が研究を推進する量子計算アーキテクチャ「STARアーキテクチャ」を想定したシミュレーション環境なども順次対応する予定です。
今後について
今後も当社は、量子コミュニティだけでなく様々な産業領域において、OpenQARP(code name)を浸透させる活動を継続していきます。そして、社会における幅広い量子アプリケーションの開発を促進させ、量子技術による社会問題の解決に貢献していきます。
NVIDIA Director of Quantum Product Sam Stanwyck様のコメント
子アプリケーション開発を加速するためのオープンなツールやリソースの提供は、量子コンピューティングの実用化を進めるうえで最も重要な取り組みの一つです。OpenQARP(code name)における富士通のCUDA-Q活用は、GPUアクセラレーションを利用できる適切なオープンなツールが、量子アプリケーションの開発や大規模化を支援し、量子コンピューティングの実用化を後押ししていることを示しています。
本ソフトウェアの公開情報
- 正式名称:Open Quantum Application Research Package (OpenQARP (code name))
- 公開日:2026年9月15日
- 公開バージョン:v0.1.0
- OSSライセンス:Apache License, Version 2.0
- ソースコード:https://github.com/OpenQARP/openqarp
- ドキュメント:https://openqarp.github.io/openqarp/
商標について
記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。
注釈
注1 CUDA-Qプラットフォーム:
オープンソースで、QPUに依存しない量子古典アクセラレーテッド・スーパーコンピューティン
グ・プラットフォーム。
注2 Quantum Simulator Challenge:
量子アプリケーション開発の成果を競うコンテスト。
注3 Subspace-Search Variational Quantum Eigensolver:
複数の量子状態を同時に探索し、基底状態および励起状態を求める変分量子アルゴリズム。
注4 Noisy Intermediate-Scale Quantum:
ノイズの影響を受ける中規模な量子コンピュータ。
注5 Fault Tolerant Quantum Computing:
エラー訂正を行いながら量子計算を行う誤り耐性量子計算。
注6 A64FX:
スーパーコンピュータ「富岳」に採用されている、富士通が開発したCPU。
関連リンク
- OpenQARP (code name) ― 特集ページ
- NVIDIA CUDA-Q platform
- Fujitsu Quantum Simulator Challenge 2025-26の開催について(2025年12月17日 技術トピックス)
- A Simple Method for Seniority-Zero Quantum State Preparation
- Spectral subspace extraction via incoherent quantum phase estimation
- A Hybrid Quantum Computing Method for UV-Vis Spectroscopy of Solvated Molecules at Room Temperature
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