
千葉県船橋市の「ふなばしアンデルセン公園」は、広大な敷地の中にある5つのゾーンから成る緑豊かな公園だ。子どもから大人までが楽しめる施設はもちろん、世界的な童話作家・H.C.アンデルセンが活躍したデンマークの牧歌的風景も楽しめる。
12月はユールイベントも開催中と聞いた地元在住ライターの筆者が、ちょっと足を延ばして行ってきた。自然と異国情緒、ワクワクする遊具など、盛りだくさんの魅力について紹介しよう。
クリスマス気分を高める「ユールイベント」開催中
一年に一度の大イベント・クリスマス。街を歩けば色鮮やかなクリスマスツリーやイルミネーションに目を引かれ、クリスマスソングに胸が高鳴る。何か特別なことをしたい、と気分が高まるのもクリスマスの風物詩なのかもしれない。
クリスマスらしいことをしたいな、と思いつつもなかなか実行できないままだった。そんなとき、「ふなばしアンデルセン公園」の「ユールイベント」の情報を目にした。その名の通り、アンデルセンの童話をモチーフにした施設づくりが魅力の公園。異国情緒とクリスマスをあわせて楽しめるなら行かない手はない、というわけでさっそく訪れてみた。
「ふなばしアンデルセン公園」へのアクセスは幾通りかあるが、今回は京成松戸線を利用して向かった。三咲駅に到着したら駅を出てすぐのバス停で、「アンデルセン公園行き」「セコメディック病院行き」「小室行き」いずれかのバスに乗車する。北ゲートか西ゲート、どちらから入園するかで降車バス停は異なるが、「アンデルセン公園」か「アンデルセン公園西口」を選ぶと、名前の通りで分かりやすかった。

「アンデルセン公園西口」のバス停を降りると、西ゲートまでの案内看板があるので安心。歩いて数分で入口を案内する看板が見えてくる。

12月2日(火)~25日(木)は「ユールイベント」開催期間中。ゲート横にも早速クリスマスツリーを発見。

公園看板の周りもクリスマス仕様に飾られていた。

クリスマスの気分が高まる中、筆者がまず向かったのは「メルヘンの丘ゾーン」のイベント広場にある「コミュニティーセンター」。デンマーク・オーデンセ市にあるフュン野外博物館の管理棟をイメージした建物は、赤い外観がひと際目を引く。

ここにはグッズショップ、展示ホールがあるのだが、今回の目的は建物前に並ぶ、ヒュッテ風の特設売り場。ここでは、現在、北欧雑貨や北欧伝承の家の妖精・ニッセのグッズが販売されているのだ。
家の納屋などに住み着いて、その家に幸せをもたらすといわれるニッセ。掃除や夜番など家の手伝いをしてくれたり、子どもを見守ってくれたりするが、いたずら好きの一面もあるという。また、クリスマスにはサンタクロースの手伝いをするともいわれており、北欧ではこの時期になるとニッセに日頃の感謝を込めてミルク粥などの好物をお供えするのが定番だ。

とんがり帽子にヒゲをたくわえた小さな姿が特徴的。ショップでは、大きなとんがり帽子をかぶった「ニッセ」「垂れ下がった帽子を被るニッセ」「スキーニッセ」など、さまざまなニッセたちが並ぶ。


北欧雑貨のラインアップも豊富で、藁で作られたヤギのオブジェ「ユールボック」、童話やクリスマスのシーンが描かれたお皿、ティーライトハウスなど、自宅にいながら北欧気分を味わえそうなグッズが盛りだくさんだ。

12月13日(土)・14日(日)・20日(土)・21日(日)、24日(水)・25日(木)には、イベント広場にて「クリスマスマーケット」を開催する。


キッチンカーによるクリスマスフードの販売のほか、オリジナルリース作りやデンマークの妖精ニッセ作り、お星さま型オーナメント作りの体験ワークショップも楽しめる。キッチンカーの出店スケジュールなど詳細は、公式サイトでチェックしてみて。
園内を彩るクリスマスデコレーション
「ユールイベント」期間中は、園内各所にクリスマスデコレーションも施されている。ということで、グッズの次はクリスマス飾り探索へと向かった。
今回、「ふなばしアンデルセン公園」の中でもぜひ訪れたいと思っていたのが「メルヘンの丘ゾーン」。アンデルセンの童話や1800年代のデンマークの風景をイメージした施設の数々が立ち並ぶエリアだ。

コミュニティーセンターを過ぎてすぐ見えてくるのは「風車」。その前には、ベンチに腰掛けるサンタクロースの像も発見した。
この風車は、デンマーク・オーデンセ市「フュン野外博物館」に現存する1800年代に建設された風車を手本に、デンマークの職人によって組み立てられた粉ひき風車で、本体の高さは16.4m、1枚の羽の長さは約11.3m。


風車について学べる1階の展示スペースでも、サンタクロースと雪だるまが出迎えてくれた。


「風車」周りにある「メルヘン企業花壇」には、ビオラやパンジー、ハボタンなどの花々が咲いていた。花の芳香に包まれながら歩いていると、花壇の中にオブジェがあるのに気が付いた。どうやら、花壇ごとにアンデルセン童話をイメージしているようだ。

こちらは「妖精が丘」をイメージした花壇。

「みにくいアヒルの子」イメージの花壇は、家の右下に注目。

ちょこんと、かわいらしいアヒルと卵のオブジェがあった。他にも「親指姫」や「雪の女王」などいろいろな童話モチーフの花壇がある。季節ごとにどう彩られるのか、春になってからもう一度来てみたい。

花壇のすぐ横に佇むのは「童話館」だ。ここでは、アンデルセンの人物像やオーデンセの町や自然について展示されている。


館内に入ると、真正面に大きなクリスマスツリーが飾られていた。色とりどりのオーナメントにライトがきらめく光景にひととき夢中になれる。

「ギャラリーアンデルセン」には、アンデルセンの人物像を語るさまざまな展示が並ぶ。

童話作家であるという以外には深く知らなかったが、旅行や写真好きだったり、こわがりだったりするアンデルセンの人間らしい一面を新たに知ることができた興味深いゾーンだった。


「図書コーナー」には、アンデルセン童話はもちろん、さまざまな絵本がズラリ。クリスマス関連の絵本も並んでいた。

「シアター」では、アンデルセン童話を上映しており、各物語の上映時間も表示されている。


農家入口にもクリスマスリースが飾られていた
さて、次に向かったのは、1800年代のデンマークの農家を再現したという施設。のどかな牧歌的風景の中に佇む農家は、異国の風景を思わせる趣がある。

「広間」は、お祝い事、夏至祭など年中行事やパーティー時に接客用として使用されていた場所。現在はクリスマス飾りで彩られている

納屋をイメージした展示コーナー
「広間」「寝室」「台所」のほか、納屋をイメージした展示コーナーで農具や当時の農家の生活風景を見ることができる。各場所には、当時の農家の人たちがどのように過ごしていたかを記した説明もある。

中でも興味を引いたのが「寝室」。なんだか狭くない?特にベッドが小さいよね?と思っていたら、なんと1つのベッドに2人で座って寝ていたのだという。壁に寄りかかって、腰に枕を当てた状態で寝ていたというが、疲れは取れたのかな、と思わず心配になってしまった。ただ、これもまた当時の習慣だと思うとおもしろい。ちなみに、広間にも四柱式ベッドを入れて寝室として利用することもあったそう。ただし、寒さが厳しい冬にはほとんど使用されなかったとか。

花の城レストハウス
ここでちょっと休憩を、と向かった先は「花の城ゾーン」。このゾーンには、アンデルセン童話をイメージしたオブジェや遊具が並ぶ。休憩所がある「花の城レストハウス」もクリスマス仕様。入口にはリース、ベルにはオーナメントとサンタクロースが。

建物内の休憩所は落ち着いた雰囲気。外観もあいまって、まるで教会の中にいるような静かな時間が流れる。クリスマスツリーが彩り、ゆったりとしたクリスマス気分も楽しめる。

四季折々の草花で彩られる、高さ2.5mの「ハートのトピアリー」も、この時期はオーナメントとベルで飾り付けが施されていた。
ほかにも、クリスマスデコレーションが各所に施され、歩くだけで季節の訪れを感じられる。クリスマスシーズンの「ふなばしアンデルセン公園」でしか出会えない、この時期だけの楽しみ方だ。
本格アスレチックから水遊びまで、遊びの広場が充実
四季を通じて楽しめる施設も、「ふなばしアンデルセン公園」の魅力である。

「ワンパク王国ゾーン」の「森のアスレチック」はかなり本格的な仕様。日本有数の規模を誇るというフィールドアスレチックは、ファミリー・じゅえむの冒険・力だめしの森・ダイナミックの4コースが用意されている。
ファミリーコースは、初心者向けコース。小さな子どもなら、このコースがおすすめだ。じゅえむの冒険コースは、「じゅえむタワー」から始まる初~中級者向けコース。ダイナミックコースは、中~上級者コース。力だめしの森コースは、上級者コースとなっている。

同じく「ワンパク王国ゾーン」にある「ワンパク城」。こちらは、ダイナミックに滑りおりる大すべり台や、ロ―プスライダーなどを併設した高さ約15mのタワー。

スタート地点から見る大すべり台。これはなかなかのスリルを味わえそうだ。
近くには、「にじの池」「アルキメデスの泉」といった、水の施設もある。

「にじの池」は、晴れた日には見事な虹がかかるという、水遊び施設。ゴールデンウィーク、7~9月は監視員を配置して船橋市遊泳用プール指導要綱に準ずる水質管理を行っているので、この期間に限り顔を付けての水遊びも可能だ。

「アルキメデスの泉」は、アルキメデスが考案したといわれる、スクリュー、てこ式揚水ポンプ、足掛け水車などを配した水の学習施設。今はやや寒々しい雰囲気だが、春や夏の季節に訪れるとまた違った魅力が楽しめそうだ。

所変わって、「どうぶつふれあい広場」の「ふれあい広場」。ここでは、のんびりゆったり過ごすヤギとヒツジの姿に、思わず心がほっこり和む。同エリアには、ウサギ・モルモットのふれあい広場もあり、モルモットに限り抱っこと、抱っこ中の写真撮影もできる。利用時間は10:30~12:00/13:30~15:30。

「花の城ゾーン」の「ミニチュアガーデン」は、アンデルセンが生まれ育った19世紀のデンマーク・オーデンセ市の街並みを再現した、小さな旅行気分を味わえるスポット。

色とりどりの家々や石畳の路地が細部まで作り込まれており、しゃがみ込んで眺めると、自分が本当にその街の広場に迷い込んだかのような臨場感を楽しめる。どこか温かさとノスタルジーを感じられる不思議な没入感のある場所だ。
四季折々の自然を堪能しながらの散策もおすすめ
広大な敷地内にある豊かな自然の中、四季を感じるのも楽しみ方のひとつだ。

ワンパク王国ゾーンとメルヘンの丘ゾーンを結ぶ「太陽の橋」から望む景色。見事な紅葉の鮮やかさが深い彩りを添えている。

移動中の道々でも、色づいた紅葉が目を楽しませてくれる。せせらぎの上で揺れる紅葉や、

目の前を赤で染めるダイナミックな光景は、場所によってその印象も魅力も異なる。自分だけのお気に入りスポットを探して散策するのも楽しそうだ。

さらに自然を味わうなら、「自然体験ゾーン」を訪れてみて。「ワンパク王国ゾーン」北西部に既存の樹林地や湿地を生かしてつくられたこのゾーンでは、「散策路」「田んぼ」などがある。雨上がりの薄霧の中、奥にある東屋がたたずむ風景は、どこか懐かしい里山の雰囲気を味わえた。
デンマークランチからバーベキューまで楽しめるレストラン

目いっぱい遊んで、散策して、お腹が空いたら「レストランメルヘン」を使用してみては。「メルヘンの丘ゾーン」にある園内唯一のレストランで、席は屋内28席と屋外72席を用意。屋外では太陽の池を眺めながらバーベキューも楽しめる。
バーベキューメニューは、「牛肉と野菜盛り合わせ」「ラム肉と野菜盛り合わせ」「ソーセージ盛り合わせ」。そのほか、オムライス、カレーライス、うどん・そばなどの定番メニューから、「ふなばしアンデルセン公園」ならではの「デンマークランチ」もある。

「デンマークランチ」1,100円
今回はもちろん、「デンマークランチ」をチョイス。デンマークのミートボール「フリカデラ」は、ベリーソースの甘酸っぱさと肉の旨みの絶妙なマッチが後引くおいしさ。肉厚なベーコンにゆで上げたプリプリのソーセージの下には、マッシュポテトもあって箸休めにもちょうどよかった。ボリュームもばっちりで、お腹が空いた人でも満足できそうな一皿だった。
遊びを通して発見・創る体験ができる「子ども美術館」
「ワンパク王国」から橋を渡った先にあるのは、体験がメインの美術館「子ども美術館」。ここでは、ワークショップ室・アンデルセンスタジオ・版画・食・染・織・陶芸・木の8つのアトリエがあり、時期ごとにさまざまなアトリエプログラムが開催されている。
12月2日(火)~25日(木)に開催中のワークショップを抜粋して紹介しよう。

「ワークショップ室」では、ラメ入りジェルドームを自分で飾ってオリジナルの世界を作る「夢みるジェルワールド」を開催。材料は日替わりで、自分で飾りを作ることもできる。所要時間は45分~、費用は600円。土日祝15:05まで受付。

「食のアトリエ」では、「粉雪シフォンケーキ」を開催している。ふんわり軽くて優しい甘さのシフォンケーキにホイップクリームや果物をデコレーションして楽しめるプログラムで、所要時間は1時間20分。費用は800円で、平日・土日祝ともに当日先着順の受付をしての体験が可能。ただし、開始時間がそれぞれ異なるので、公式HPにて受付状況・方法などとあわせて詳細の事前確認がおすすめだ。

大人向けのワークショップ「竹のカトラリー作り」も「木のアトリエ」にて開催する。こちらは、竹を材料とした茶杓やスプーン、ナイフといったカトラリー作りが楽しめる。竹を割るところから、鉈や電動糸鋸、やすりなどの本格的な工具を使用しながら形を整えていく本格的なものづくりが体験できる。次回の開催は2026年1月21日(水)・22日(木)・28日(水)。費用は1,100円で、対象は高校生以上。電話での先着受付となっている。
このほかにも、即興劇や織物、陶芸など、幅広い体験が待っている「子ども美術館」。特別な体験を通じて、子どもから大人まで“つくる楽しさ”にじっくり向き合える場所だ。訪れるたび、新しい発見があり、きっと家族や友人と過ごす時間がより豊かになるはず。
冬のクリスマスシーズンはもちろん、季節ごとに表情を変える景色や体験が待っている「ふなばしアンデルセン公園」。どこを歩いても新しい発見に満ちていて、訪れる人それぞれの“特別な一日”を紡いでくれる、思い出づくりにもおすすめの場所だ。日常を少し離れて、小さな旅に出かけるような気持ちで訪れてみてはいかがだろうか。きっと、一冊の物語を読み進めるような一日を過ごせるはずだから。
■ふなばしアンデルセン公園
住所:千葉県船橋市金堀町525
開園時間:9:30~16:00 ※時期によっては17:00まで
休園日:12月は毎週月曜、および12月29日(月)・30日(火)・31日(水)。そのほかのスケジュールは休園日カレンダーに準ずる。
公式HP:https://www.park-funabashi.or.jp/and
(Kanako Aida)