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滋賀県立琵琶湖博物館

AI×専門家が強調した人間参加型AIアプローチで花粉症対策に革新!~実践的な「AI自動花粉同定システム」の開発に成功~

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滋賀県立琵琶湖博物館 国立研究開発法人産業技術総合研究所 独立行政法人国立病院機構福岡病院


                  図1 「AI自動花粉同定システム」の概要

■概要
 ・滋賀県立琵琶湖博物館、国立研究開発法人産業技術総合研究所、独立行政法人国立病院機構福岡病
  院の共同研究により、人間参加型AIアプローチにより空中花粉飛散量の自動同定システムの開発に
  成功しました。
 ・従来のAIが抱えていた「理想的画像では高精度だが、実際の観測現場では精度が落ちる」という課
  題を克服するため、専門家がAIの誤認識を繰り返し修正して再学習させる「人間参加型AIアプロー
  チ」により、実践的なAIモデルの構築を行いました。
 ・福岡病院における2019年の空中花粉スライドを対象にして、本研究で開発した自動同定システム
  を応用した結果、医療現場で重要視される「花粉の飛び始め」や「飛散ピーク」の時期を捉えるこ
  とのできる実践的な花粉モニタリングを実現しました。
 ・本成果は国際空中生物学会の学術誌『Aerobiologia』に掲載されました。

■論文のポイント
 人間参加型AIアプローチによって実践的な「AI自動花粉同定システム」を開発
  これまでにも、花粉の傷みがなく、他の粒子も含まれないサンプルを用いて専門家が撮影した「き
 れいな花粉画像」を対象にした場合には、精度の高いAI自動同定モデルの開発が進められています。
 本研究でも、現生の花から採取した花粉標本だけで学習させた初期AIモデル(Preモデル)の同定精
 度は高かったものの、実際の空中花粉の顕微鏡スライド(福岡病院でのサンプル)に適用すると、春
 の二大花粉である「スギ」と「ヒノキ*」をほとんど見分けることができませんでした。これは、実
 際のスライドには塵や他の粒子も含まれており、空中花粉も割れたものや傷んだものもあり、「きれ
 いな花粉画像」だけで学習したAIモデルでは対応できなかったものと考えられます(ドメインシフト
 問題)。
  そこで本研究では、AIシステムによる誤同定画像を専門家が再同定を行い、教師データを更新して
 いく、「人間参加型(Human-in-the-Loop)機械学習」という新たなアプローチを取り入れること
 で、実践的なAIモデルの構築を行いました。「スギ」と「ヒノキ」を中心としたAIモデルによる誤判
 定花粉画像を肉眼で確認・修正して、新たに教師画像に加えて再学習させるプロセスを3回繰り返し
 た結果、実際の飛散動向と類似度の高い、高精度な実践的AIモデルへと進化させることに成功しまし
 た。
                     *「ヒノキ」(*スギを除くヒノキ科の花粉を示す)」

            図2 人間参加型AIアプローチによる「AI自動花粉同定システム」の開発手法

 顕微鏡スライドスキャナと最新のAIモデルを融合して自動同定システムを構築
  本研究では、(1)顕微鏡スライドスキャナを応用して、大量のスライド標本のデジタル画像を自
 動で撮影して、(2)産業技術総合研究所が開発した地質試料分析用AI画像解析ソフトウェア群を用
 いて花粉画像の同定と計数を実施しました。両者の最先端技術を融合することにより、人間による観
 測負担を軽減することができる総合的な自動花粉同定システムを構築することに成功しました。

 花粉症対策のニーズに直結する飛散動向を再現
  人間参加型AIアプローチを通して改良を重ねた最終的なAIモデル(Fine3モデル)により、2019
 年の2~4月に福岡病院で調査された空中花粉スライドの自動同定を行った結果、スギ・ヒノキの飛
 散ピークの時期について、専門家による肉眼でのカウントと同等の精度で再現することに成功しまし
 た。さらに、アレルギーの初期治療を始める上で重要な「花粉の連続飛散の開始時期」の動向につい
 ても、AIモデルによる推定から再現することができました。

           図3 AIと専門家による空中花粉観測値の比較(福岡病院2019年)

■論文の意義
 1. 社会的・医療的意義:花粉症患者のQOL向上と専門家の負担軽減
  花粉症の症状を抑えるには、花粉が本格的に飛び始める前から薬を服用する「初期治療」が推奨さ
 れています。本システムが実用化されれば、地域ごとの「花粉の飛び始め」や「飛散ピーク」の時期
 を迅速かつ低コストで提供できるようになります。これにより、患者は適切なタイミングで予防行動
 が取れるようになり、医療機関にとって診断や治療薬処方のための基礎情報となります。
  現在、日本における詳細な花粉観測は、専門知識と経験を持つ医療関係者が毎日顕微鏡を用いて、
 何時間もかけて目視で数える手作業に依存しています。この莫大な労力と後継者不足が、花粉観測を
 維持する上での大きな課題でした。本AIシステムが目視作業を代替(あるいは補助)することで、専
 門家の負担を劇的に軽減し、持続可能な花粉観測体制を日本全国に構築することが可能になります。

 2. 学術的意義:「人間参加型AI」のバイオイメージングへの実践的応用
  本研究は、「AIのプログラムそのものを改良する」のではなく、専門家がAIによる誤同定を修正し
 て教師データを更新することで「人間がAIに与えるデータの質を高めていく」という人間参加型AIア
 プローチが、実践的な現場での空中花粉識別において有効であることを実証しました。このアプロー
 チは、空中花粉モニタリング分野だけでなく、花粉をはじめとする微化石の自動同定など、様々な地
 球科学・環境科学分野への応用展開が期待されます。

■論文情報
 タイトル:Practical implementation of Artificial Intelligence for airborne pollen monitoring in
      Japan through the Human-in-the-Loop machine learning
 著者  :Ryoma Hayashi*, Takuya Itaki, Ayumu Miyakawa, Kazuhide Mimura,
      Chie Oshikawa, Eiko Koto & Reiko Kishikawa(*は責任著者)
 掲載誌 :Aerobiologia
 オンライン掲載日:2026年7月6日
 DOI  :https://link.springer.com/article/10.1007/s10453-026-09922-z

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