ハイテク製造業調査、投資拡大の一方で先進実務の広範展開は3割未満にとどまる
A.T. カーニー株式会社(東京都港区、日本代表:針ヶ谷 武文)は、ハイテク製造業の経営幹部400人を対象とした調査をもとに、デジタル投資から価値を引き出すための条件を分析した論考「近視眼的DXを超え、価値を創出するデジタルへ」を公開しました。
本稿は、KearneyのDigital Advantage Index調査に基づき、ハイテク製造業におけるデジタル投資、事業優先事項、ユースケース、デジタル・オペレーティングモデルの成熟度を分析しています。今回の重要な示唆は、第一に、デジタル投資がパンデミック期の売上高比7~9%から、今後2~3年で11~15%へ拡大する見通しであることです。第二に、投資を価値へ転換するには、成熟度の測定だけでは不十分であり、「なぜ投資するのか」「どこで価値を出すのか」「どのように実行するのか」を一体で設計する必要があります。第三に、先進的なデジタル実務の広範展開は各領域で3割未満にとどまっており、投資拡大と実行体制の成熟にはなおギャップがあることが示唆されます。
67%が売上高比9%以上を計画、DX投資は7~9%から11~15%へ拡大
ハイテク製造業では、デジタル投資の水準が明確に切り上がっています。パンデミック期のデジタル投資の中央値は売上高比7~9%でしたが、調査回答者の67%は、今後2~3年で少なくとも売上高比9%をデジタルへ投資すると回答しました。これにより、投資中央値は11~15%へ上昇する見通しです。
この変化は、デジタルが単なる効率化や既存業務の置き換えではなく、事業成長、製品革新、サプライチェーン強化、オペレーション改善を支える基盤になりつつあることを示しています。一方で、投資額の増加だけでは価値創出は保証されません。本稿では、現在の実務成熟度だけを見る「デジタル近視」を避け、事業優先事項とデジタル投資を結び付けることが重要だと指摘しています。

9割超が事業レジリエンスを上位3課題に、成長7割超・イノベーション6割超が続く
デジタル投資の背景には、ハイテク製造業が直面する事業優先事項の変化があります。調査では、事業レジリエンスを上位3つの優先事項に挙げた回答者が9割超となり、成長は7割超、イノベーションは6割超となりました。一方、最重要事項として見ると、イノベーションは40~45%、成長は30~35%、事業レジリエンスは20~30%の回答レンジとなっています。
この結果は、企業が単一の課題ではなく、複数の経営要請を同時に満たすデジタル投資を求めていることを示唆します。特に、需要予測・計画、迅速な試作、R&Dプロセス改善、生産性向上など、バリューチェーン全体に影響するユースケースへの関心が高まっています。機能別・部門別に分断された投資ではなく、事業優先事項から逆算してユースケースを設計することが、価値創出の前提となります。

先進実務の展開は3割未満、75%の実行課題が投資回収を左右
投資拡大の一方で、デジタル・オペレーティングモデルの成熟には課題が残ります。調査回答者の多くは、先進的なデジタル実務をまだ広範には展開できておらず、その割合はどの次元でも3割未満でした。また、デジタル戦略とロードマップが文書化され、事業全体で十分に理解されている企業は4社に1社にも満たない状況です。さらに、回答者の4人に3人は、業務優先順位付けとデジタル・プログラム全体のコスト透明性維持に課題を抱えています。
このギャップは、デジタル投資の成否が、技術導入そのものではなく、実行モデルの設計に左右されることを示しています。クラウド、AI/ML、IoT/Edgeなど成熟・急速成熟中の技術は価値を示しやすい一方、新興技術については、ユースケースとの適合性を見極めた選択的投資が必要です。
本稿は、デジタル近視を超えるために、第一に包括戦略を構築すること、第二に企業横断のユースケースへ投資を集中すること、第三にデジタル・オペレーティングモデルの成熟を急速に高めることが重要だとしています。投資額の増加を価値創出につなげるには、事業課題、ユースケース、実行体制を一体で管理することが求められます。

- 論考について
論考名:「近視眼的DXを超え、価値を創出するデジタルへ」
URL:https://www.jp.kearney.com/issue-papers-perspectives/the-digital-advantage-index
- 監修者
大塩 崇 シニアパートナー
早稲田大学理工学研究科卒。NTTデータ、米系戦略コンサルティングファームを経て、A.T. カーニーに入社。ハイテク、通信・ICT、エレクトロニクス、商社を中心に、シナリオプラニング、新規事業構築、Go-to-market、事業ポートフォリオの再構築、中長期経営計画、M&A戦略、収益改善、オペレーション改革などのコンサルティングに従事。
川崎 健史 パートナー
東京大学理学部卒、Duke University, Fuqua School of Business (MBA) 修了。NTT東日本、米系戦略コンサルティングファーム、Big4コンサルティング部門等を経て、A.T. カーニーに入社。日系及び東南アジアの通信・ハイテク企業を中心に、中期経営計画・グローバル経営マネジメント・テクノロジー戦略・事業モデル変革・業務パフォーマンス変革等の幅広いCXOアジェンダに従事。近年では、戦略コンセプトの立案から実行サポートまで一貫したデジタルトランスフォーメーションのサポートも数多く手掛ける。
A.T. カーニーについて
A.T. カーニー(グローバル・ブランド名:Kearney)は、100年にわたり世界有数の経営コンサルティングファームとして、Fortune Global 500企業の4分の3以上をはじめ、世界各国の政府機関に信頼されるパートナーであり続けてきました。40カ国以上に拠点を展開し、私たちの最大の強みは「人」にあります。インパクト・ファーストを掲げ、独創的な発想と実行力をもって、顧客企業が直面する最も困難な課題に挑み、変革の実現をともに推進します。日本には1972年に進出し、あらゆる主要産業のリーディングカンパニーに対し、戦略策定から変革の実行まで一貫した支援を提供しています。詳しくはWebサイトをご覧ください。https://www.jp.kearney.com/