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ローランド・ベルガー

ヘルスケア 2050

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長期マクロトレンドが再定義する医療エコシステムとイノベーション

ヘルスケア産業は、他業界と比べてイノベーションが起きにくいと言われている。これは、規制の厳しさやステークホルダーの多さなど、さまざまな要因に起因する。一方で、製品・サービスのライフサイクルが長いがゆえに、イノベーションには常に長期的な視点が求められる産業でもある。

こうした長期的なトレンドを見据える上で、確実に起きうる事象として挙げられるのが、世界的な人口増加と高齢化である。これに伴う人口動態や保険制度の変化に加え、テクノロジーの進展や地政学的環境の変化を踏まえることで、一定の確度を持った複数の未来シナリオを描くことが可能となる。

ローランド・ベルガーでは、これらの長期的なマクロトレンドをベースに、2050年を見据えたヘルスケア産業の未来シナリオを検討している。本稿では、その中から示唆に富むキートレンドの一部を紹介する。

世界の高齢化は急速に進んでいる

世界全体での65歳以上の割合は、2020年には9.4%だが、2060年には約18.7%まで倍増する見込みである。また、高齢化は、先進国だけでなく、新興国でも同様に進行しており、全世界的な課題となっている。

人々はより長生きするが、健康長寿というわけではない

世界の人々の平均寿命は、2022年時点の73.7歳から、2050年には78.3歳まで伸びることが予測されている(+4.6年)。しかし、健康寿命の延びはそれほど大きくなく、2022年の63.7歳(2022年)から2050年には66.8歳(2050年)に到達する(+3.1年)。

フレイルやアルツハイマー病などの高齢者に多くみられる疾患が健康寿命を脅かす

2050年には心疾患や脳卒中、糖尿病などの疾患に加えて、筋骨格系疾患やアルツハイマー病、慢性腎不全などの高齢者に多い疾患や生活習慣病によって、われわれは自立生活を奪われる

再生医療などの新たな技術の社会実装が進み、慢性疾患がもたらす負の解決策となる

慢性腎不全が増えると、人工透析にかかる医療費は大きな社会負担になる。腎臓オルガノイドは、2025年時点では薬剤評価用途などで実用化されているのみだが、2050年にかけて、血管化や尿排出経路などの技術的課題を克服し、生体透析装置として機能、さらには腎移植に代わる手段へと進化し、慢性腎不全の社会課題解決の切り札として期待されている。

かつてないほど複雑性、不確実性の高い時代に直面しているなか、「未来がどうなるか」を論じるのは、非常に難しい。予測すること自体が無意味で、予測できない未来に対応できる戦略や組織作りが必要、と論じるむきもある。しかし、他業界と比べると、ヘルスケア産業は、比較的長期的な未来を見通しやすいように思う。そもそも、ライフサイエンスは、技術の誕生から実用化までのライフサイクルが極めて長い。また、技術的には実用化段階になっても、社会への実装にあたっては、規制整備、保険償還、医療現場の体制、患者や社会の受容性などをクリアしていく必要がある。ということは、2050年に社会実装される技術は、現時点で既に生まれているものである可能性が高い。現時点で生まれている技術を基に、2050年の社会や経済がヘルスケアに何を求めているかについてシナリオが立てられれば、それなりに意味のある予測が立てられるのではないか。

冒頭の4つの文章は、シナリオを立てる基となるような数多くある社会変化の予測の一部だ。高齢化が世界中で進み、平均寿命が80歳近くまで伸びる。一方で、そのうち11年は、筋骨格系疾患やアルツハイマー病、慢性腎不全に苦しみ、健康がままならならない。医療費は増大するが、こうした高齢者を支える労働人口も減少する。
これらの社会変化が起こる蓋然性は高そうだ。そうだとすると、未来のヘルスケアでは以下のようなシナリオが考えられそうだ。

1. ロコモティブシンドロームや軽度認知障害、肥満など、未病段階での早期介入に医療費がシフトする
2. 貴重な労働人口を守るため、労働人口に顕著な疾患、例えばメンタルヘルスに対しては、企業が積極的に支援する
3. 不妊治療は、大半の国の政府の予算に組み込まれる
4. 腎臓オルガノイドが透析に替わる治療として取り入れられることで、医療費抑制に貢献する

上記は、ローランド・ベルガーが予測するヘルスケアの未来の一部だ。弊社では、サイエンスやテクノロジーの進化を土台に置きつつ、その社会実装可能性を社会、経済、政治的なトレンドから評価し、11つのシナリオを作成した。人口動態や疾患構造の変化はもちろんだが、医療財源においても政府から民間へのシフトが進んだり、地政学やESGに代表されるグローバルな社会課題も医療政策に影響を与えていくことが予測される。本稿では、2050年のヘルスケア像を描くことで、時間軸の長い取り組みが多いヘルスケア産業における中長期の戦略と投資の方向性に示唆を提示することを目指している。

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諏訪 雄栄(シンガポールオフィス:シニアパートナー)幅広い顧客企業の支援に従事し、特に医薬品、医療機器、病院をはじめとするヘルスケア産業全般に精通。
これまでに、成長戦略の策定、海外事業展開、マーケティング、市場参入戦略などに関する多数のプロジェクトをリード。

京都大学卒業。

徳本 直紀(東京オフィス:パートナー)京都大学大学院農学研究科修了後、ローランド・ベルガーに入社。
その後、ヘルステックAIスタートアップにてCOOとして組織・事業の立ち上げや研究開発を含む幅広い実務マネジメントを担い、再びローランド・ベルガーに参画。

製薬、医療機器、病院、コンシューマーヘルスなど、ヘルスケア産業のクライアントに対し、Go-to-Market戦略、新規参入、AI・デジタル活用、M&Aなど、企業の成長加速に向けた支援に豊富な経験を有する。

従来の医療産業の枠を超え、一気通貫のPatient Journeyを実現するためのコンサルティングに注力。

ローランド・ベルガーについて

ローランド・ベルガーは、世界有数の経営コンサルティングファームとして、幅広い業界と手法に対応するサービスをご提供しています。本社をドイツのミュンヘンに置き、1967年の設立以来、あらゆる業界における、変革、イノベーション、そしてパフォーマンス向上における専門性と実行力に高い評価と信頼を得ています。すべてのクライアント支援でサステナビリティを両立させる理念を持ち、持続的な企業および経済の発展の貢献に取り組んでいます。
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