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特定非営利活動法人アートで社会問題を解決する会キミト

新民法(共同親権導入)施行直後の当事者6名の体験・判決資料の分析を公開 ──NPOキミトが当事者レポートから「現場の実態」を報告

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―法務省Q&Aが示す「調停による葛藤低減効果」は今回の6名では確認されず、当事者が体験している家裁のリアルとの乖離とは

特定非営利活動法人アートで社会問題を解決する会キミト(以下、「弊会」。所在地:東京都中央区銀座一丁目、代表:森めぐみ)は、今年4月に施行された「新民法」による共同親権導入後の家庭裁判所に関する実態把握のため、弊会が主宰する学び場「森ゼミ」※に在籍する当事者(別居親)6名を対象に、 1.アンケート調査、2.座談会/個別ヒアリング、3.施行前後の判決資料の比較 を実施しました。
本リリースは、6名の体験エピソードと2件の判決資料から確認された具体的事実と、そこから導かれる弊会による分析・考察を提示するものです。

※「森ゼミ」とは、全国の連れ去り被害者から参加希望者を募り、体験会・テストを経て選抜された当事者/別居親の学び場。現在9名が在籍し、法改正前から家庭裁判所での経験共有と法的リテラシー向上に取り組んでいます。


NPOキミト「共同親権導入後の家庭裁判所」調査レポート

■調査の位置づけ
新民法(共同親権導入)施行から4か月が経過した段階で、当事者の体験を基にした民間調査は極めて限られています。今回の調査は、立法趣旨と実際の運用の間にどのようなギャップが生じているかを把握するためのイニシャル資料として位置づけられます。

■調査概要
調査1:アンケート調査(回答者6名)
調査2:Web座談会方式のヒアリング(参加者6名)及び個別ヒアリング(「調査1」の6名)
調査3:施行前後の判決内容比較(森ゼミ生2名の裁判資料)
※調査1の回答を調査2で精査した。
■調査期間
令和8年7月25日~8月10日
・アンケート 7月25日~8月6日
・座談会 8月8日
・個別ヒアリング 8月9日~10日
・判決文比較 7月
■調査結果の要点
●「家裁は変わった」と回答したのは6名中1名のみ。
●調停・審判・訴訟の場面で、共同親権の議論が出ない事例が多数。
●面会交流の拡充が進まず、施行前と同様の運用が継続。
●弁護士が共同親権を阻む構造は依然として存在。新民法の立法趣旨の理解はない。
●一部裁判官には「片親疎外」への理解が見られるが、運用の標準化には至らず。
●施行後の判決でも、父母の協力義務・人格尊重義務が十分に考慮されていない事例を確認。

■法務省Q&Aとの乖離~Hさんの家裁の判決~
1、法務省のQ&A内の調停の効果
法務省が公開する「新民法Q&A」では、調停について次のように説明されています。
「父母の葛藤を低下させ、子の利益に目を向けてもらうための取組が調停手続において実施されている」 「調停の過程で感情的な対立が解消され、親権の共同行使をすることができる関係を築くことができるケースもあり得る」と、「調停には父母の葛藤が下がる効果がある」との前提です。
しかし、今回の調査では、法務省が想定するような調停での「葛藤の低減」や「共同親権に向けた合意形成」の効果は確認されませんでした。

2、施行後の判決内容
Hさんの判決は施行後複数回期日を経て終結し6月に判決が出ました。
施行後に弁論終結したHさんの判決では、1.調停で葛藤が低減した効果はなく、2.共同親権の議論も行われず、3.子どもを会わせず非協力的な相手方が単独親権を得て、3.面会交流の内容は「手紙を書いてもよい」間接交流、4.試行的面会交流の必要性はない、4.相手の離婚慰謝料が数万円認められるという完全敗訴の結果でした。家庭裁判所の審理も判決も、連れ去り抑止効果はありませんでした。
(弊会は、特に、「調査官調査報告書」で子どもが「パパに会いたい」と述べているにも関わらず、判決では子どもの声は重視されず3.のように「手紙を書いてもよい」間接交流が判決されたことを重く見ています。)

3、新民法の立法趣旨と法務省Q&A
NPOキミトは、2年前の共同親権導入の主要な国会審議は本会議と法務委員あわせて計14回すべて傍聴しましたが、衆議院でも参議院でも国会議員は「連れ去り」のワードを口にしてテーマ化した議論をしました。この立法趣旨を実現させるための具体性を示したのが法務省の「Q&A形式の解説資料(民法編)」です。
ところが、上記のように、施行後のHさんの家庭裁判所の判決は法務省Q&Aとの乖離したものでした。

■当事者の声
●「共同親権という言葉は一度も出なかった」(Aさん)
ー調停委員から共同親権の議論はなく、施行前と変わらない印象。
●「裁判官が『洗脳』という言葉を使った」(Bさん)
ー片親疎外への理解が示されたが、運用の標準化には至らず。
●「直接交流が高裁で間接交流に下げられた」(Cさん)
ー理由は「子どもがまだ小さいから」。共同親権導入後も従来と変わらず。
●「共同親権を主張したら『そういうことは言うな』と言われた」(Dさん)
ー裁判官が立法趣旨を十分に理解していない可能性。
●「母が嫌だと言うだけで交流が断絶されたまま」(Eさん)
ー面会交流の運用は施行前と変わらず。
●「裁判官が『子の利益を第一に考える』と明言した」(Fさん)
ー一部に変化の兆しはあるが、弁護士は従来通り。

■判決比較(施行前後の差異)
森ゼミ生2名(Gさん・前出のHさん)の判決文を比較したところ、以下の共通点が確認されました。
●いずれも同居親の単独親権を認定。
●父母の協力義務・人格尊重義務の重要性が十分に考慮されていない。
●判決理由が同居親側の主張に偏重。
施行後に弁論終結したHさんの判決は全国的に早い判決とみられるが、前述のように内容は施行前と同様。
■考察1~変化のなかった点とその理由について~
<変化のなかった点>
1:立法趣旨との乖離
Gさん・Hさんの事件を長期間観察し本人尋問も傍聴した結果 施行前後で判決内容に差異が見られなかった。
2:調停の「葛藤低減効果」は今回の6名では確認されず
法務省Q&Aが想定する「葛藤の低減」「共同親権に向けた合意形成」は、今回の6名では確認されなかった。
3:連れ去り抑止効果は確認されず
前述の判決2事例はいずれも典型的な連れ去り事案であるが、判決は旧来の判断枠組みのままであった。

<理由の考察>
上記のように家裁に変化が見られないがこの理由について次のように考察している。
弊会は令和6年の通常国会で「新民法」の施行が決定したあと同年11月から独自に家庭裁判所の調査を傍聴と記録閲覧で実施している。(※【離婚裁判調査数】参照)
令和6年11月21日から令和8年7月31日までの約1年8か月の間、離婚裁判のスタイルの変化はほとんどなく、裁判官が「親権の共同行使についての意見書」の提出を指示するようになった1点が変化であった。
民法の改正はしてもそれを実現する裁判の運用や制度や仕組みなどの具体化のための変更がないことが理由であると考える。

【離婚裁判調査数】
実施期間:令和6年11月21日~令和8年7月31日
方法:離婚裁判傍聴と離婚裁判記録閲覧
場所:東京家裁、高裁地裁及び名古屋家裁、横浜家裁、さいたま家裁川越支部
総数:485件
(内訳)
1、傍聴415件
家裁381/高裁33/地裁1件
※地裁は離婚関連の損害賠償請求事件
このうち本人尋問75件(家裁73件/高裁1/地裁1)含む
2、記録閲覧70件
家裁13/高裁53/地裁3/最高裁1件
※高裁と最高裁は原審(家裁)の記録も含む全てを閲覧
※地裁の3件は離婚関連の損害賠償請求事件

■考察2~合意であれば共同親権は出ている~
弊会は和解判決で2件「共同親権」が出ているのは把握しています。1件は高裁判決、1件は家裁です。
そのうち1件の別居親側の代理人弁護士は「相手次第でしかなく裁判所が葛藤を下げて共同親権のマインド醸成を促すような姿勢はない。子どもの利益への視点は感じない」と、裁判所は施行前後で変化を感じないとの感想を述べていました。また「連れ去りは人格的利益を害する行為と言えるが新民法が掲げた人格尊重義務に言及しネガティブに判断するといったことは見受けられない」と率直に語っていました。
裁判所が当事者双方に対して同じ権利を認める機能はないことを鑑みると、和解判決でなら当事者双方に親権を定める「共同親権」は実現可能であると言えます。
ただし、片方が頑なに応じないのであれば和解での強制性は期待はできず、相手次第の現実の壁はやはり高いと言えるでしょう。
■弊会の見解と今後の活動
今回の調査結果(6名の体験・2件の判決資料)から、 新民法(共同親権導入)施行後も、家庭裁判所の運用は旧来の慣行に強く引きずられている可能性がある と弊会は考えています。
特に、制度の核心である父母の協力義務と人格尊重義務 が十分に考慮されていない点、 そして連れ去り抑止効果が確認されなかった点 は重大です。
今後、弊会は引き続き裁判所の運用実態の継続調査、国政・関係府省庁へのレポート活動を通じて社会への情報提供に努めることで、新民法の立法趣旨の一番の要である「子どもの利益の実現」を目指して活動していきます。

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