
Tokyo Artisan Intelligence株式会社(本社:神奈川県横浜市、代表取締役社長 CEO・CTO:中原啓貴、以下:TAI)は、独自アーキテクチャによるエッジAIシステム向けリコンフィギャラブルAI半導体チップ(※1)のテストチップ(開発コードネーム:Sting Ray)の設計・製造・テストを含めた評価を完了し、量産へ移行したことをお知らせいたします。
本開発は、TAIが持つ最先端の半導体設計技術とアーキテクチャ構想を具現化したものです。また、今後のグローバル展開および量産化を見据え、高度な半導体チップ設計技術を持つOppstar社(本社:マレーシアペナン州、以下Oppstar)の日本法人であるOppstar Japan株式会社(本社:神奈川県横浜市、以下:Oppstar Japan)からの協力を得て、量産チップに向けた技術ノウハウを獲得いたしました。
今回のテストチップ完成を機に、今後のグローバル市場を見据えた量産化へのロードマップを本格始動させ、製造・サプライチェーン体制の構築を加速させてまいります。
■開発の背景
生成AIの普及に伴い、データセンターが消費する電力の増大と、それに伴う膨大な発熱問題は、地球規模の課題となっています。従来の汎用GPUに依存したシステムでは、計算能力の向上と引き換えに環境負荷が限界に達しつつあり、GX(グリーントランスフォーメーション)の実現には、電力効率が高い「専用AIチップ」の普及が不可欠です。
TAIはこの社会課題を解決すべく、低消費電力と高速処理を両立する独自アーキテクチャのAI半導体チップ開発を自社主導で推し進めてまいりました。今回のテストチップ設計完了は、当社の高度な半導体技術を実証する大きな成果であり、次世代AIチップの市場投入に向けた重要なマイルストーンとなります。
さらに今後の量産フェーズに向けてサプライチェーンを構築するため、グローバルな製造支援体制を持つ外部パートナーとの戦略的提携を進めております。
■テストチップ「Sting Ray」について
「Sting Ray」は、「フィジカルAI」の普及において「複数AIの同時実行」による「消費電力の増加」という重要課題を解決するために開発する量産チップ設計前の技術検証用テストチップです。
FPGAが持つ「回路を書き換えられる柔軟性(再構成可能な構造)」の強みを活かしつつ、ベンチャー企業として限られたコストで実用的な半導体製造を可能にする「UMC社40nmプロセス」を採用しています。本チップの主な特徴は以下の通りです。
1. 技術的な4つの特徴
・柔軟な「再構成性」の検証: 用途や実行するAIモデルに応じて、処理回路を柔軟に変更できる構造を探索・最適化しています。
・配線チャネルの最適化: アーキテクチャの要となる「配線チャネル」の検証が可能であり、配線の状態を直接観測・制御できる、シンプルかつ極めて効率的な構造を実装しました。
・低消費電力・低遅延の追求: 現場の限られた電力リソースでも高効率に動作し、ミリ秒単位の判断が求められるリアルタイム処理の基盤を検証します。
・設計・検証ソフトウェアの開発:リコンフィギャラブル半導体チップにユーザの回路を実現するための設計ソフトウェア、および、製造したテストチップが正しく動作することを確認できる検証ソフトウェアを開発しました。
2. 従来のチップ(汎用GPUなど)との違い
従来の汎用GPUや固定型のAIチップは、高度な処理と引き換えに膨大な消費電力と発熱を伴い、さらに特定のAIモデルにしか最適化できないという課題がありました。「Sting Ray」が目指すアーキテクチャは、「低消費電力・低遅延」を維持しながら、現場の要望に応じて複数のAIを同時に、かつ柔軟に切り替えて実行できる点において、従来のチップと一線を画します。
3. 想定用途(フィジカルAI分野)
高度な現場判断が必要とされる、以下のようなフィジカルAIへの組み込みを想定しています。
・インフラ・鉄道: 多数のカメラやセンサーを同時に回し、リアルタイムに異常を検知する点検・保守システム
・製造・工場: 複数ラインの品質確認や外観検査を同時に行う自動化システム
・ロボティクス: 状況の変化に応じて瞬時に自律的な判断・制御を行う産業用・移動型ロボット
本プロジェクトを通じて、設計から製造、評価ボードによる動作確認、制御ソフトウェアの確立までの一連のプロセスを自社主導で経験したことで、量産化に向けた基礎的な検証環境が整いました。ここで得られた知見や課題を、次世代量産チップ「Manta Ray」の開発へ繋げていきます。

■今後の展望とロードマップ
TAIは、今回の「Sting Ray」設計完了を起点として、検証・評価および応用領域の探索を本格化させます。今後は、国内外のパートナーとの連携によるサプライチェーンの構築と、次世代AI半導体チップの量産化に向けた「Manta Ray」プロジェクトを推進してまいります。
具体的な取り組み内容
1. 量産化に向けた「Manta Ray」プロジェクトの始動
次世代AI半導体チップの量産化に向け、UMC社の40nmプロセスの採用を決定いたしました。これにより、スタートアップ・ベンチャー企業であっても、限られたコストでAI半導体チップの製造・販売が可能となります。量産化および開発環境の提供に向け、以下のロードマップでリリースする計画です。
・2027年1Q: 設計ソフトウェア(α版)
・2027年2Q: エンジニアリング・サンプル(ES版)チップ製造
・2027年3Q: ES版チップを搭載した評価ボード
・2027年4Q: 量産版(MP版)チップ製造
・2028年1Q: MP版チップを搭載した評価ボード
2. 低消費電力・低遅延を活かした「フィジカルAI」領域への展開
本チップが持つ「低消費電力」かつ「低遅延」なAI処理能力は、リアルタイム性と信頼性が厳しく求められる現場領域(フィジカルAI分野)において最大の強みを発揮します。今後は、以下の特定産業分野への導入・社会実装を進めてまいります。
・鉄道・インフラ: 点検・保守支援システムへの組み込みによる効率化と安全性の向上
・製造・検査: 製造ラインにおける品質確認の自動化、リアルタイム異常検知
・ロボット: 自律移動ロボットや産業用アーム等の、現場における瞬時の状況判断・制御
3. サプライチェーン協業の展開と発信
「Sting Ray」テストチップの完成を契機に、開発環境の整備から応用領域の探索、パートナー連携、そして社会実装へと段階的にプロセスを進めます。
研究開発で得られた知見を産業用途に合わせて検証するとともに、国内外のパートナー企業や海外ベンダーと、評価・設計・実装の各フェーズにおける協業可能性を模索してまいります。GX(グリーントランスフォーメーション)や省人化といった地球規模の社会課題に貢献できる「低消費電力AI技術」として世界へ向けて発信し、検証の進展に応じて段階的にその成果を公表します。
なお、2026年8月6日に東京・日本橋にて開催予定のイベントにおいて、今回発表したテストチップの実機デモを公開する予定です。イベントの詳細は近日中に改めてご案内いたします。
■代表コメントTokyo Artisan Intelligence 代表取締役社長 CEO・CTO 中原啓貴
独自のアーキテクチャに基づくテストチップ『Sting Ray』の評価完了により、私たちの最先端技術が社会実装へ向けて大きな一歩を踏み出しました。すでに次のステージである量産化フェーズ、そしてグローバル展開への土台が整いつつあります。本プロジェクトを通じて世界のGXを牽引し、日本から世界を変える最先端のAI半導体プラットフォームを構築してまいります。
■会社概要
・社名:Tokyo Artisan Intelligence株式会社 (トウキョウ アーチザン インテリジェンス)
・代表取締役社長 CEO・CTO:中原啓貴
・設立:2020年3月3日
・所在地:神奈川県横浜市港北区新横浜2丁目3−12 新横浜スクエアビル14階
・事業内容:深層学習アルゴリズムの研究開発、エッジAIプロダクトの開発および販売、AIエキスパート・エンジニアの育成
・会社HP: https://tokyo-ai.co.jp/